09
「……あー…ごほんっ」
「「!!」」

しかし、その穏やかな空気は、一人の咳払いによってかき消される。誰だよ、俺と孫のコミュニケーション邪魔するのは!!と思って声のした方向、生徒会室のドアの方に目線を向ければ、そこには…。

「お、おい、JOJO…もう良いか?」
「あ?何がだよ…」
「…っち」

入口で物凄く困った顔をしたシュトロハイムが腕を組んで立っていた。目線を合わせようとすると、物凄く困った顔して視線を逸らされる…何なんだ…。後、承太郎がまた物凄い形相でシュトロハイムを睨みつけている気がするのは気のせいだろうか…。シュトロハイム…お前承太郎に何かした…?

そんなシュトロハイムを先頭にして、後ろから

「あー!!シュトロハイムのバカ!!バレちゃったじゃない!!」

と何故か写真を構えて頬をふくらませたスージーQと、

「じょ、承太郎君だけズルい!!先輩、私も、私にもハグしてください!!」

と腕を伸ばしてくる朋子と、後、それから……

「……JOJOお前…」

ワムウが出て来た…。ハグして!!と腕を伸ばしてくる朋子の頭を撫でて、別に良いけど後でね、と宥め、スージーQからカメラを奪って、中のネガだけ抜いてカメラだけポイッと返した。朋子は頬を膨らませ、スージーQは文句を言ったが、俺はそれどころでは無い。

「ど、どうしたの…ワムウ先生…?」

何かワムウの後ろから、ドス黒いオーラーが出てて、超怖い…何でそんなに怒ってるんだよ、俺が何したって言うのさ…孫かつ弟との家族愛を深めてただけだろ!?

「いや…」

しかし一行に不機嫌な顔を崩さないワムウに俺は焦る。そりゃぁ…前世界では色々あったぜ?シーザー殺した張本人だし、凄い憎んだ…でも、ワムウの最期に、アイツの事を、一人の戦士としてすげぇ尊敬出来る存在だって思えたんだ。
ここはあの時の世界とは違う…今俺は、ワムウの事を、シーザーの存在を抜きにして、恨んだり憎んだりする事なく、ただただ、一人の生徒の目線で、見る事が出来る。
俺は、『ワムウ先生』の事を凄い気に入ってるんだよ。そんなワムウに怒られるのは俺としても本意じゃない。誰も怒られるのなんて好きじゃないだろ?
…ってか本当に何で怒ってるの、何、ハグが羨ましいの?そんなんいくらでもしてやるよ!!!
少々焦ってしまった俺の脳内から導き出された答えが、そのまま口からポロリと出て来てしまったのが悪かったのか

「先生もハグする?」
「……」

言ってから…ワムウの眉間の皺がググッと深くなるのを確認し、俺はしまった!!と思った。しかし、今更訂正も出来る筈はなく、両手を、ハハハッと乾いた笑い声を出して、ワムウに向かって軽く両手を広げてみた。すると…。

「…ハグか」
「うおっ」

フワッと体が軽く浮く感覚がした…あんまりにも自然すぎて、一瞬、何が起こったか理解するのに暫く時間が掛かったが、俺は…ワムウに、抱っこされていた。わーお、力持ち…じゃねぇよ!!!

「なっ!!え!?何してんの!?」

しっかり尻部分を膝で固定してくれてるし、ワムウの体がブレないので、中々安定感はある。が…何で俺を抱っこ!?

「お前がハグするか?とか聞いてくるから、やってみただけだが…」

キョトンッとした顔して首を傾げるワムウに、実はコイツ天然属性なのでは…と内心頭を抱えつつ、抱き上げられた事で近づいたワムウの髪を軽く引っ張った。

「いや、だからって抱き上げなくても良いじゃんか!!」
「…そうか?」
「そうだよ!!!ってか俺重いっしょ?無理しなくて良いよ!!」
「いや、以外と軽いが」
「嘘つけ!!」

って言うかこの体勢地味に恥ずかしいんだよ!!皆に見られてんじゃねぇーか!!
前世界でもワムウにこんなに接近した事が無いので、無駄に緊張してしまう。ワムウの奴、意外と顔整ってるし、近いし、何か暖かくて安心するし…あ、でも、とにかく良く分からないけど…。ワムウの機嫌何か治ったっぽいぞ?

「先生…機嫌治った?」
「…?最初から機嫌など悪く無いが…」
「えぇ…そ、そうかぁ?」
「あぁ」

絶対何か怒ってたと思うんだけど…でもまぁ、機嫌治ったなら良いか…そう思っていたら、

「いい加減離せ」

シュトロハイムの声がしたかと思ったら、俺は腕をグッと引かれ、ワムウに抱っこされた体勢のまま後ろに仰け反った。

「うぉっ!?」
「おい!!」

そのままワムウに腰支えられたまま、仰け反るかと思ったが、上半身は承太郎にしっかりと支えられて、ワムウは

「大丈夫か…?」

とか言いながら、俺の足をそっと地面に降ろしてくれた。そのまま地面に足が付いた俺は、意外と近くにいたシュトロハイムを振り返ってキッと睨みつけると、思いっきり抗議の声をあげる。

「なっ!!何すんだよ、シュトロハイム!!すげービビったぞ!!」
「…あ…すまん」
「え、何そんな素直に謝ってんだよ、お前…」

一緒にいた時間はそれほど長くも無いが、それなりにシュトロハイムの性格は理解しているつもりだ。お前、そんな素直に謝るタイプだったっけ?…そう思いつつ、シュトロハイム自身も自分が何故、そんな行動に出てしまったのか良く分からないらしく、不思議そうに顔を顰めた。

「まぁ対した怪我してねぇし良いけどよぉ…」

だが、俺の上半身を今だにガシッと掴んで離さない承太郎がそれこそ、この世の敵でも見るような目でシュトロハイムとワムウを睨んが…シュトロハイムもワムウも今度こそ承太郎をガチで怒らせたんでは無いかと、内心ヒヤヒヤしたのだが、突っかかってはいかないので、まだ本気では無いらしい。

…勘弁してくれ、承太郎は普段は大人しいタイプなんだからさぁ…と、本気では怒ってないと判断して、少し落ち着いて来た脳内で、シュトロハイムが何故か不思議そうに自身の手元を見ているのに気付いた。

そこで、自分の左手の事を思い出す…そういえば、俺の左手は無くなっているというのに、コイツは五体満足のままなのだが、何故だろうか…皆若返っているのは分かるし、それに置いて、傷とかが無くなっている奴らがいるのも分かって来たのだ。ただ、この世界での俺が…『左手を無くした理由』が、俺にはまだ分かっていない。

と、言うのも、この世界の俺は、日記を付ける週間などあまり無かったようで、この世界で生きていた筈のジョセフ・ジョースターの詳細は、俺自身も今だ謎な部分が多い。

「はーい!!皆、JOJOの争奪戦はいつもの事だけど、お話あるからちゃんと聞いてねー」

しかしその瞬間、パンッと両手を叩いて、スージーQがニコリと笑って皆の注目を集めた。
……って言うか、お前何でまだカメラ構えてんだよ!!くそ、新しくネガ入れやがったな!?さっきカメラも没収しとけば良かった!!っていうか、争奪戦って何?コレいつもの事なの!?

「はい、それじゃぁ先生、早くお話を」
「あ、あぁ」

しかし、折角場が静まって来たのに、再度かき回すのも面倒で、俺は多分、物凄い複雑な顔をしながらも。ワムウの方を見た。

「皆が頑張ってくれた甲斐があって、明日は文化祭だ、生徒会諸君には明日も中々忙しい事が待っている…」

そこで、少し言葉を濁したワムウを見て、その場にいた全員が何となく嫌な予感がしたらしく、ワムウから一歩だけ距離を取った。まるでワムウを生徒会室で初めてあったときのような反応をしてしまったが、今回は全員が、距離と取っていた。だっておかしい、この世界のワムウ先生はいつもハキハキと物を言うタイプなんだ。こんなふうに、何かを言い淀むってのは、俺達にとっても良くない事があるんだってのは容易に想像が付く。

「おいおい、逃げるな」

そんな俺達に、ワムウは少しだけ困った顔をして

「お前らには大変申し訳ない事なのだが……」

俺らにとってはあまりにも嬉しくない、

「明日付けで、杜王学園高等部は……」

衝撃発言をかました。

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