07

とある学園の校舎裏では、大量の男の屍が出来上がっていた。最期の一人を思い切りぶん殴って、地面に転がし、軽く足で蹴ってから、金色の髪と、頬に妙な痣を持ち、長い鉢巻をした男は、ポツリと小さく呟く。

「弱い…」
「そう思うなら手加減してあげれば良かったんじゃないですか?」

その男の隣から、顔を出し、困った風に笑う優男風の赤茶色の髪色の男は、問いかける。
その男の言葉に、金色の髪の男は嫌そうに顔を歪めた。

「手を抜くのも嫌だ…」

そうして、金色の髪の男は、ポケットから、駄菓子屋で売っているようなシャボンの容器を取り出して、プカプカとシャボン玉を大量に作っていった。辺りは、夕暮れで、赤色の日差しに包まれていた。
透明色の丸い球体が辺りを飛んでは、消えて行く。

「そもそも絡んで来るコイツらが悪いだろ」
「まぁ確かに、先輩、普段は大人しい方ですもんね」
「だろう?」

男は同意されて微笑んだ。
が、その顔はすぐに退屈そうな目に様変わりしてしまう。その目はとても冷めていて、自分のやりたいように人生を生きているが、それを楽しいとは思えない。そういった感情の無い目だった。

その姿を見ながら赤茶色の髪の男は『この人も、基本的に売られた喧嘩とか買っちゃうからいけないんだろうけど、しかも喧嘩売った相手を容赦なく叩き潰すからなぁ…』とは思ったが、正直に言っても、この男の性格が改善された試しも無く、自分にとっても面倒な事が起こるので黙った。ときには何も助言しないのも賢い生き方だ。

そうして金色の髪の男が、シャボン玉を新たに作成しながら、

「なぁー、何か強い相手とか知らないか?」

と聞いてくるので、赤茶色の髪の男はそう言われて、苦笑しながら腕を組んだ。

「急に聞きますね…うーん……あっ」
「お、何かあるのか?」

そうして、一つだけ心当たりを思い出したのだ。

「あ、そういえば、杜王学園高等部の生徒会長は、強いって噂ですよ」
「…ほぅ」
「何でも別名『狂犬使い』とかで、学園の問題児を手懐けてるんだとか?」
「へぇ」

話していくうちにだんだん目をキラキラと輝かせ出した金色の髪の男に、赤茶色の髪の男は、杜王学園高等部の生徒会長に、ひどく申し訳無い気持ちになった。

「だが、そいつは他校の生徒会長なんだろ?下手に手出して大事になるのは困るんだが…」

しかし、意外とまともな意見を返してくれた金色の髪の男に、赤茶色の男は、普通はそうだが…と言いかける。
向こうの生徒会長には申し訳ないが既に興味をも持たれてしまったようで、逃げようがない。

「それなら大丈夫ですよ、だってウチの学校、近々、杜王に吸収合併されますから」
「……は…?」

途端、金色の髪の男が間抜けな声を出した。

「いえ、だから、吸収…」
「俺はそんな事聞いてないぞ!!?」
「だって、先輩ほとんど学校来ないじゃないですか!!」

真顔で何を言ってるのか分からないという反応をされ、赤茶色の男が怒鳴る。

「仕方ねぇだろ!!俺バイトしなきゃいけねぇんだから!!」
「いや、それは知ってますけど…」
「金がねぇんだよ!!分かってんだろ!?」
「いや、はい、すいません…」

途端不機嫌になってしまった金色の髪の男に、申し訳なさそうに笑って、赤茶色の髪の男はさらに続けた。

「で、先程の話ですが…」
「…」
「学園外ならまだしも、同じ学園内の生徒の『喧嘩』なら、どうでしょう?生徒会側も色々と困る事があるのでは?」
「成程…」

バシンッと両手を打ち付けて、ニヤリと笑う。

捲り上げられた制服の、シャツから出た男の『左腕』は、膝下の部分に、クッキリと『縫い目の後』があった。

「楽しみだなぁ花京院」
「程々に…シーザー先輩…」

赤茶色の髪の男…花京院は盛大にため息を付き、金色の髪の男、シーザーは、持っていたシャボン液で、先程までのシャボン玉とは違う、大きなシャボン玉を作り出した。夕暮れの赤色がシャボン玉に反映して、

紅のシャボン玉が出来る。

そうして、シャボン玉が、弾けて、消えた。

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