◆ 二日目 昼
どのくらいそうしていただろうか。猫になってからというもの、なんだか時間の流れが早くなった気がする。人間の時だったら絶対に耐えられないであろうただじっと座っているこんな状況でも、気付けば3、4時間あっという間に経ってたりして驚くこともある。
「うー、眠くなってきた…」
そしてもう一つ、猫というのは暇さえあればすぐに眠くなってしまう生き物らしい。くああ、っと本日何度目かのと大きなあくびをしたとき、遠くから砂利道を歩いてくる足音が聞こえ、可愛い耳が勝手にピクリと反応を示した。
足音の主はもちろんシャルナーク。運転席側に立ち、鍵を開けているようだ。ついにやってきたチャンスに身を固くしてタイミングを計っていると、ガチャリ、という音と共に扉が開く。
「あ」
シャルナークの声に、今か!と出しかけた足を引っ込める。危ない、もう少しで飛び出すとこだった。
「シズク呼んでこなきゃ…」
一人呟やいたシャルナークは、半開きのドアをそのままにアジトの方に走って行った。足音が遠ざかるのをしっかり確認し、チャンスとばかりに私はすぐさま車に飛び込んだ。
「良かった…乗れた…」
思いの外上手くいった作戦に安堵のため息を漏らすと、すぐに後部座席の下に潜り込んで身を潜めた。
その後すぐにシャルナークとシズクが車に乗り込んで来て、車は出発した。窓から外がぎりぎり見えるくらいに首を出し、景色を眺める。もし、また現場に行くことになった時、道を覚えてないといけないからだ。
「シャル、あそこになんかあるかな?」
「どうかな…。団長の読みが正しければ、手がかりがあるはずだけど」
「そっか。あるといいな。私もデメちゃんと頑張って探すね」
「ねぇ、全部吸い込みそうで恐いんだけどw」
流れていく景色を眺めていたとき、2人のそんな会話が聞こえた。一体なんのことだろうか?しかし私は、そこまで気に止めず、流れる景色を覚えることに意識を集中させた。
それから10分後、車は廃ビルが立ち並ぶ路地を進み、ある一つの建物の前で止まった。
「さ、着いた」
ばたん、ばたん、とドアの音が響きシャルナークに続いてシズクが車から降りる。ここで私は大変なことに気付いた。
「…ピンチだにゃ…」 冗談が言えるくらいの余裕はあったものの、ピンチはピンチだった。うん、お気づきでしょうが車から出れない。しくったぜ。 どうしたものか、と暫し考えを巡らせていると、何故か再びドアが開いた。
「シャルー、空気籠るから窓開けっぱにしといていい?」
「…あ!うん、オーケイ、了解。」
なんか知らんが今日はとてもラッキーだ。シズクが立ち去ったあと、ご丁寧に開かれたままの窓からひょい、と飛び出して、静かにシズクの後を追った。
Good morning cat
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