短編 | ナノ



「部活で遅くなっちゃった……」


誰かに話してるわけじゃないよ、独り言だよむなしいとかそれ以上に怖いんじゃチクショーーーー!だって暗いもん人いないもんついでに今日の帰りの会のとき先生が近くで不審者が出ました気をつけてくださいっていってたもん。


「気をつけろって何に気をつけりゃいいのよお」

もう泣きたい。不審者って多分男の人じゃないか走って逃げるとか民家に駆け込むとかとっさに無理だよ無理無理無理!…………あれ、いま、足音聞こえませんでした?無理。無理無理無理。振り向く?駄目追っかけられちゃう。ここは自然に足早にそう振り向かないで、ああああああなんで足早くするのー!いやそれよりさっきより近くな「名字!」あれ、聞き覚えがあるぞ。

肩をわしぃってつかまれて強制的に回れ右をさせられると特徴的すぎるゴーグルが目の前に。同じクラスだから見慣れてるはずだけど真っ暗ななかみるとビクつくよね。


「ききききき鬼道くん」
「どもりすぎだぞ」
「ごめんなさい」
「いや別にいい。――それよりも名字は連絡を聞いていなかったのか」
「聞いてました……」

そんなあからさまに呆れてくれるなよ鬼道くん。
「しょうがないじゃんデッサンしてたらもう真っ暗になっちゃってたし一緒に残ってた友だちも帰り道逆だし!私もうどうしたらいいか……」
「サッカー部は、」
「へ?」
「いつも遅くまで練習している。そして名字、女子だけの下校は危険だ。だから、」


えっと差し出されたこの手はどういう意味なんだろう。わけわからん。一体全体鬼道くんは何を考えているんだ。困った、多分私はこの手を握るべきなんだろう。なんとなくそうしなければいけない流れ的な何かを感じ取ってしまったのがいけない。吸い寄せられるみたいに重ねると鬼道くんはしっかりと握りこみ離してくれない。行くぞってどこにですか、まさかあなた私の家知ってるんですか、いやいやまっさかあー!






ところがそのまさか





240205;君のことならお見通しだよ



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