短編 | ナノ



俺の目の前でくりくりのでけえ瞳を輝かせているガキは確かやっと小学校1年になったか。その割には近頃のクソガキと違ってふてぶてしさなど感じない。いやこれから徐々に出てくるのかもしれないが。とりあえず人の姿を見つけてはきらきら瞳を瞬かせているうちは安心だろう。

いつもいつも名前さんにお呼ばれされるとこいつは俺の後ろを金魚の糞みたいについて回る。この間は危うくけっつまづく所だった。それもあってか名前さんが呼びかけて離そうとするもこいつは俺から絶対に離れない。仕方ねえなと後ろにいたやつをひっつかまえてあぐらをかいた上に乗っける。テレビをつけて適当にガキが好きそうなチャンネルに合わせてやるとその主人公の必殺技らしきものを延々と俺に説明してきた。へーすげえな現代の子供番組は。感心していると名前さんがピラフとスープとサラダと……とテーブルの上を鮮やかにしていく。食べよっかと嬉しそうに笑うので膝の上のそいつをクレーンよろしく抱えていつもの定位置におく。全員で手を合わせて囲んだ食事は相変わらずうまかった。

食事を終えて、皿を流しに持って行く。それは自分の役割だといわんばかりにスポンジを構えたそいつに皿を渡すとかしこまりましたとドラマのセリフを口にした。こっちは何も頼んでねえんだからその返事は違うだろ。リビングに戻れば名前さんと無言でニュース番組をみる。あ、アナウンサー噛んだ。
業務を無事終了したあいつは適当に風呂に入れてきて布団に転がしておいたらすぐに寝た。それにしてもしまりのない口だ。ほっぺたをつまむとよくのびる。しばらくそれで遊んでいると名前さんがやってきてよく寝てるねとへらりと笑った。母子揃ってよく似るもんだ。

時計も充分回ってしまったので今日はもう帰るか、玄関まで送りにきた名前さんのほっぺたにキスをする。くすぐったそうに首を縮こめると小さく手を振られた。またあしたというとへらり。また笑った。






旦那さん予定



(補足)バツイチ子持ち夢主と付き合ってる不動さん/結婚秒読みの雰囲気だしたかった

240130



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テーマ「人外ファンタジー」
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