短編 | ナノ



どうしても終わらない宿題があるのと名字に泣きつかれたから、円堂に事情を話して練習に遅れると伝えにいった。そしたら半田とマックスに「ヒューヒュー」とはやし立てられた。円堂も訳が分からないくせに一緒になってヒューヒュー言い出したので、収集がつかなくなっていたときに鬼道がやってきて「ここは俺に任せろ」「すまない鬼道、頼んだ」「ああ」マントをたなびかせた後ろ姿を俺は忘れないだろう。








担任から借りた教室の扉の窓から見れば、すでに名字はプリントにシャーペンを構え机と睨めっこしていた。なんだちゃんとやる気あるんじゃないか。と思って扉を開けようとしたらなぜか少しだけ開いているうえに白い粉がぱらりと舞った気がした。見上げれば黒板消しが挟まっている。スルーしてもう一方の扉から入る。「そこは入ってよ!」踵をかえす。「すいませんごめんなさい帰らないでくださいプリーズヘルプミー」「よろしい、黒板消し掃除するからそれまでにプリント分かるとこ埋めておいてくれ」「あいさー」



ベランダで風向きを確認して黒板消しをはたく。チョークの粉がやっぱり煙たい。窓から覗き見れば名字のシャーペンはすっかり止まっていて動く気配がないので早めに教室に戻ってやれば人の顔を見て速攻で挙手をした。


「はい、名字さん」
「わかりません」
「どこが」
「全部」
「大丈夫だ、名前のとこ書けてるだろ」
「え、私そこからだったの」
「あんだけ早い段階でシャーペン止まってたらそりゃな」
「書くよ!名前書かないと0点じゃん!」
「名前書いても問題解けなかったら0点だけどな」
「風丸が現実でめった刺しにしてくるよーー!!」



うっうっ誰だよ女子に優しい風丸まじイケメンとか言ってたの。こいつただのどSやん。イケメンの皮かぶった鬼畜やん。だめだなんかこれかっこいいキャッチコピーだわ。余計女子よってきそう。貶してもイケメンかよ。「風丸って魔性」丸めた参考書で叩かれた。



「で、――をxに代入するんだ」
「おおーすげー終わった終わった」
「終わってもらわないと部活行けなくなるだろ」
「徹夜するかと思ってた」
「安心していい、置いて帰るから」
「まじか」


教室の戸締まりをして鍵を名字に渡す。返しておいてと言えばまた間延びした返事をかえされた。俺はグラウンドへ、名字は職員室へ向けて歩き出した。そしたらいきなり大声で呼び止められた。

「一郎太ーー!校門とこで待ってるからーー!!」


叫ぶとバタバタと廊下の角を曲がっていった。俺は片手で顔をおさえた。







「だから学校の中で呼ぶなって言っただろばか名前」







思春期ですので


240125;ごめんあそばせ



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