ぼんやりと凝視する対象はミラだったり、ジュードくんだったり、あるいは地面、あるいは空とまあばらばらなわけだけれど。声をかければ多少からかいまじりに返してくれるし、わたしはそれにいつもみたいに憎まれ口で返せばいいだけだった。
「アルヴィン遅いとろい歳なの四十肩なの」
「名字ちゃん……四十肩って俺まだ20代だぜ、しかも肩は関係ないだろ」
「煩いさっさと進め、ジュードに置いてかれるじゃないか」
その視線の淋しさだとか虚しさだとかにいつも背筋を震わせて、アルヴィンがまだここにあるように確かめるように縛り付けるように私は乱暴に言葉を紡ぐ。すると仕方ないなみたいなくしゃりとした表情をするので、私の振動数は上昇せざるを得ない。これは条件反射と惚れた弱みなのだと思う。
「ジュードくんはおいていかないっしょ」
「私じゃなくてアルヴィン単体の問題だけど」
「なんかあり得て怖い」「ははは」
「乾いた笑いやめてください」
置いていかないから置いていかないでよ。手を掴むことなんてしないで、長いスカーフを掴む。皺になるとか言ってもさしたる抵抗もしないから毎度引きずってパーティーに合流するのだ。
「けど、あれだよな」
「何さ、色ボケ傭兵」
「ジュードくんに置いてかれそうになったら名字が引っ張ってくれるんだろ」
なんでこんな思ってもいないだろう一言にうかれてしまうだろう。引っ張ったって彼は別の遠いところに意識をおいているのに、ここにあるのはただの器にすぎないのに。馬鹿、色ボケ傭兵。嘘ばっかりのくせに人に惚れさせるぐらいにはいい男のくせになんでこんな駄目な人間なの、馬鹿。
沈んだ心臓を探している
230907 どうしようもない屑野郎に惚れるどうしようもない子供