ぐだりとお話
ファーストフード店に入ってしばらく。ぼちぼちと食べ始め、それぞれが満足しだした頃。

「で、伊織ちゃん、今日はどうしたの?」

及川の問いかけに、伊織は「別にー?」と気のない返事を返す。

「別にって、伊織ちゃん何かある時じゃないと、俺ら誘ったりしないじゃん」
「……そーだけどぉ……」
「クラスで嫌なことがあったとか」
「いや、今日はいつも通り過ごしてたけど? 伊織」
「花巻の見てないとこで、何かあったかもしんねーだろ」
「…………学校では別に何も変わったことなかったよ」

やいやいと詮索され、伊織は堪忍したように話始める。そもそも、部活メンバーを誘った時点で、理由も話さず過ごせるワケがないのだ。わかっていたことである。

「今日、烏野が体育館の点検か何かで部活休みなんだって。だから、こ……兄貴が帰ってくるの早いから……」
「……それだけ?」

拍子抜け、と言ったふうに訊ねる及川に、「私にとっては、重大なの!」と言い返し、ジュースをすする。

「でも、そんなん今までもあっただろ? 今更じゃね?」
「三年生になってからは、初めてだし……。あらかじめ分かってるなら、極力外にいたいっていうか……」
「別に避けなくてもいいだろ」
「避けてる訳じゃないけどぉ……。兄貴にきついこと言っちゃうし……」
「何、伊織。今日ウジウジしてる日?」
「っぽいなー」

遠慮のないメンバーにむっとするが、急遽無理を言ったのは伊織なだけに、強くはでれない。しかし、そろそろこの話題で引っ張られるのも伊織的には辛いところなので、話題転換をはかる。

「あのさ、私の話は一旦置いといて、次、どうするか決めない?」
「そういえば、どこ行くか決めてねぇや」
「そろそろ無くなりそうだしね〜」

及川は言いながら、紙コップを持ち、光に透かして残量をチェックする。「まじか。そんなに?」と及川の紙コップを横から見ていた花巻は自分のものも光に透かし、確認するのだった。

「伊織ちゃんは、買いたいものがあったんじゃないの?」
「あー……あれ、嘘って言うか……。誰か連れ出そうと思って、とりあえずで理由つけたから……」
「あ、ならさ! 俺の買い物付き合ってよ!」

伊織が申し訳なさそうに言うと、代わりの用事を及川が提案する。 伊織以外は三人揃ってぶーぶーと文句をつけていたが、それ以外に行くあてもなく。
結局は及川の買い物に落ち着いたのだった。

「ちなみに、及川何買いたいの?」
「彼女の誕生日がもうすぐでさ。下見みたいな?」
「お前、それに伊織連れていくのか……」

軽く引いたように松川が言うと、きょとん顔で「女の子目線の意見も欲しいじゃ〜ん」などとのたまう。

「私、及川の彼女に恨まれそうだわ……」
「いつもの事だろ」
「ご愁傷さま」

ぽつりと伊織が呟き遠くを見ていると、岩泉、松川から、慰めのようで慰めでもない適当な言葉をかけられた。
当の及川は、伊織の言ってる意味もわからないようで、きょとんとしたまま、不思議そうに歩いていくのだった。



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