お休みにはおでかけ
月曜日。青葉城西高校男子バレーボール部は、いつも通りオフとなる日である。もちろんマネージャーである伊織も例外ではないのだが……。

「はい! 今日は私に付きあってもらいます!」
「はぁ?」

帰り支度をしていた花巻を捕まえ、机に勢いよく手をつきながら宣言する。

「だから、私の買い物に付き合ってもらうの! 荷物持って。さ、次行くよ!」

そう言い捨て、花巻の手を引きながらずんずん進む伊織。向かうは隣の隣のクラス、一組だ。
教室の後ろの方で友人と談笑しながら準備する松川に近づき、「すみません。松川お借りしますね」と言うと、花巻同様手を引き連れていく。松川もその友人も、驚き困惑しているのだが、そんなことお構いなしだ。
両の手で二人を引きながら歩く伊織は、女子なうえにわりと小柄な方なので、抵抗しようと思えば出来るのだが二人とも大人しく従う。

「なあ、これどういうこと」
「買い物に付き合って欲しいんだと」
「ほー……」

後ろで言葉を交わしているうちに、昇降口に着いた。伊織は迷うことなく三年五組の靴箱を目指す。

「あ、岩泉ー!」
「伊織? と花巻、松川?」
「え、みんな? どこどこ」

岩泉の名前を呼ぶと、当然のように隣にいる及川。伊織の予想通りだ。

「はい、全員揃ったね。じゃあ今日は、私に付き合ってもらいます!」
「はあ?」
「どこに?」
「買い物」

岩泉と及川に短く言い捨てると「早く靴はいて校門集合ね」と言い三組の靴箱に向かった。四人は不思議に思いながらも、「予定もないしな」「ま、付き合ってやるか」とそれぞれの靴箱へ向かう。
校門へ着くと、そこには既に伊織がいた。

「で、伊織ちゃん。今日はどこに行くの?」
「うーん、決めてない」
「そもそも、急にどうしたんだよ」
「あ、ごめん。急に無理やり連れ出して。休みだったのに……」
「いや、それはいいんだけどよ」

及川、岩泉に挟まれて歩く伊織を見て「宇宙人確保だな」と笑い合う松川、花巻。

「もー! 後ろうるさい!」
「適当にどっか入るか?」
「それでいいんじゃね?」
「無視すんな!」

ちょうどすぐそこにファーストフード店があり、これ幸いとばかりにぞろぞろ入店する。

「あんたらと来ると、嫌でも目立つ……」

店内で伊織がぼそりと呟くと、「しょうがねーだろ」「諦めろ」「及川もいるしな」と返ってくる。

「ごめんね、イケメンで」
「腹立つ」
「ムカつく」
「うざい」
「……」

上から花巻、伊織、松川と続き、最後に岩泉の平手が背中にきまった。

「いった! みんなひどい!」

ギャーギャーと喚く及川のことなど気にもかけず、それぞれの注文を済ませていく。商品を受け取り、席に着いた。
次の行き先が決まるまで、ここでのんびりするんだろうなと、伊織はそんなことを思いながら、ポテトに手を伸ばしたのだった。



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