お兄ちゃんの決意
青葉城西との練習試合後、家までの帰り道にて。孝支は悩んでいた。伊織と及川はつきあっているのだろうか……と。そう、及川の挑発にまんまとハメられていたのである。
及川による妹への過剰なスキンシップの数々を思い出し、少しの苛立ちを感じた。
影山は「気にしないでください。あの人、人ひっかき回すの好きなだけなんです」なんて言っていたが、例えひっかき回すためとはいえ、女マネにあんなことできるだろうか?

(俺から清水に……ってのと同じことだよな……。清水に……うん、無理だ)

それに及川からひっつかれた時の伊織の反応も反応である。平然としていた。あの照れ屋で意地っ張りな伊織が、男にひっつかれて平然としているなんて、一体どういうことだろうか。
普段ならば「何ひっついてんの!? 離れて!」くらい言いそうなものである。

(実はつきあってから数年経ってて、もうあのスキンシップに慣れてしまった……とか)

頭の中でぐるぐる考えてみるが、イマイチこれといった答えはでてこない。中学一年の途中から今までの数年間、伊織とはろくに会話をしていない。していないどころか、なぜか避けられている。俺から何かをしたつもりはないけど、どこかで気に触ることをしてしまったんだろう、なんて。最初はとても軽い気持ちだったのだが……。ここまでくるとどうしていいのかわからない。

(一回話聞こうとしたときも、完全に拗ねてて喋ってくれなかったしなぁ)

それに、そんなに長い期間伊織ときちんと会話をしなかったのも初めてで、昔は大体なんでもわかっていた伊織のことが分からなくなってて当たり前だなぁ、なんて。今更思っても遅いのだが、後悔せずにはいられない。
孝支は暫しの間逡巡し、そして決めた。

「よし! 家に着いたら伊織と話す!!」

頬を叩き気合を入れ、家までの帰路を急ぐのだった。



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