空恋模様 | ナノ


変態認定、返上しました。 [ 10/13 ]

「ねぇ、都城さん」
「なぁに?」

着替え終わり、休憩室にて帰り支度をしていると、相馬くんが話しかけてくる。無視するのはなんとなく面倒だったので、手を休めずに気のない返事をした。

「そろそろ山田さんたちの誤解を解いてきてほしいんだけど……」

相馬くんが避けられるようになり、二日目。昼間の時点で佐藤くんにバレて笑われ、それで終わりかと思われたのだがそんなことはなく。
閉店時間を迎えた今も、ずっと避けられ続けている。流石に仕事にも支障を若干きたしており、出来上がった料理を受け取ってもらえないのにはただただ困った。私か佐藤くんを通さなければ、小鳥遊くんと轟さん以外のメンバーに料理を運んでもらえないのだ。

(まひるちゃんだけなら普段通りなんだけど……)

まひるちゃんとの中継役を常日頃やっているので、まひるちゃん相手なら特に面倒だとは思わないのだけど、流石にそれが二人も増えると面倒になる。
佐藤くんもそこそこに面倒だったようで、仕事の後半になってくると相馬くんに八つ当たりするようになっていた。

「そうねぇ……いじるのは楽しいけど、確かにそろそろ解いてあげるべきよねー」
「……俺だって傷つかないわけじゃないんだからね……」
「……ふーん。まあいいや。佐藤くんも私も若干面倒だったしね。ちょっとお話してみるわ」
「俺のためとは意地でも言わないんだね……。まあ、ありがと」

相馬くんの言葉に「だって、ほんとに相馬くんなんかのためじゃないもの」と返し、ぽぷらちゃん、まひるちゃん、山田さんが更衣室から出てくるのを待つ。
しばらくして、目的の三人が更衣室から出てきた。相馬くんがいるとややこしくなりそうなので、休憩室の外に追い出している。

「ねぇ、ちょっとお話いい?」

軽く話しかけると、三人は不思議そうに首をひねる。そして、「相馬くんのことなんだけど」と言うと、一瞬にして顔を青ざめさせた。

「そ、相馬さんがどうかしたんですか?」
「そんなに構えないで……! ちょっと誤解を解こうと思っただけだから!」

訝しげな表情で聞いてくる山田さんをみて、相馬くんの信用はなくなるの早いなーなんて思ったり。

「誤解?」

ぽぷらちゃんとまひるちゃんは、声を揃えて何が誤解なのかと聞いてくる。相馬くん、ほんとに信用ないんだな……とまたも思うものの、一旦それは置いといて。

「相馬くんが16歳の若い女の子にひっつかれて興奮するってやつ。あれ、私の冗談だったの」
「え?」

三人とも揃って声をあげ、ぽかんとした顔をするのが可愛いな、などと関係のないことを思いつつ、きちんと続きを説明する。

「相馬くん、山田さんに飛びつかれてちょっとしんどかったみたいでね。それで助けてって言われたから、ちょっと飛びつきにくくなるようなこと言ってみようかなって」
「そうだったんですか!?」
「葵ちゃん……」
「山田さん……」

ぽぷらちゃんとまひるちゃんが若干呆れているようだが、誤解は解けただろう。最後に「ごめんね、怖い思いさせて」と謝ると、三人ともがこちらこそと頭を下げるのだった。

「でね、相馬くんに謝りに行かない? 私も悪かったし、みんなも避けちゃったわけだし……ね?」

相馬くんに対して、ほんの少し……長さにして5ミリほどの罪悪感から謝罪を提案すると、三人とも乗り気になってくれて、ぽぷらちゃんと山田さんはパタパタと相馬くんを探しに走り去る。
そんな二人を見て、また顔を青くさせるまひるちゃんに「まひるちゃん、無理に近くで謝らなくてもいいのよ? むしろ殴ったら余計にダメだから、二人で遠くから謝る?」と話しかければ、申し訳なさそうに「うッ……すみません……」とまたまた謝られた。
その後、相馬くんは無事に謝罪の言葉を受け取り、翌日からは元のワグナリアに戻ったのだった。ちなみに、山田さんは飛びつく時に、必ず「相馬さ〜ん!」と一声かけてからにしているようだ。

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