空恋模様 | ナノ


恋人らしく、妬いてみます。 [ 8/13 ]

がっしゃーん! と何か食器類の割れた音が響く。……そして小鳥遊くんの怒号も。

「山田ぁぁぁぁ! また割ったな!!」
「やッ山田じゃありません!」
「その手に持ってる物は何だ!」

あさっての方を向いて、下手な口笛を吹く山田さんの手には、キレイに真っ二つにされたお皿が。

「ちちち違いますよ! これは……その……拾ったんです!」
「そんな訳あるか!」

慌てて言い訳をするが、小鳥遊くんを誤魔化せるわけもなく。ガミガミとこっぴどく叱られる山田さんを見てふと思う。

「……山田さん、毎日何か割ってる……?」
「あれ、今頃気づいたんだ」
「あんまり意識してなかったから。これ、佐藤くんが見たら余計に怒られそうね。山田さん」
「いつものことだね〜」
「平和ねー」

相馬くんと二人で雑談していると、小鳥遊くんに怒られた。

「平和じゃないですよ! お二人で和まないでください!」
「あはは、ごめんごめん」
「山田さん、今日佐藤くんがお休みで良かったわね」
「ほんとですよ! みんなしていつも山田を責めて!」

むー、と唇を尖らせる山田さんに小鳥遊くんは容赦なし。「破損報告、書きに行くぞ」と抵抗する山田さんを無理やり連れて行ってしまった。
そう言えば、山田さんともあまり話したことがないような気がする。さっきみたいにたまには話すけど……。(先ほどのくだりが会話だったのかは怪しいが)

「山田さんとも話してみようかなー」
「小鳥遊くんの時みたいに?」
「気持ち悪いくらいに知ってるわね」
「一応彼氏に気持ち悪いとか言う?」
「私、彼氏だからって他の人と区別したりしないの。人類みな平等よ」
「悪口まで平等にしたら、良くないと思うんだけど」

相馬くんと軽口を叩きあっていると、半泣きの山田さんがキッチンに飛び込んできた。

「相馬さ〜ん! 山田、傷つきました! 慰めてください!!」
「ぐふっ!!」

相馬くんの腹に盛大なタックルをかました山田さんに、少し驚く。遠慮の少ない子なのかしら?

「や……山田さん……ちょっと離れてもらっていい……?」
「大丈夫です。山田、ちゃんと相馬さんに合わせて移動出来ます」
「そういう問題じゃなくてね……?」

この構図は……案外資料にないかもしれない。写真……はダメだ、携帯は更衣室においている。デジカメも更衣室……。こんなことなら、持ってきておくべきだった。……今更悔やんでも仕方ない。とりあえず、メモして残すことだけはしなくては!
メモ帳とペンを取り出し、いざ書こうとした時。

「都城さん! 見てないで助けて!」
「えー……」
「なんで嫌そうなの!」
「わかったわよ……」

少しむくれつつ、屈んで山田さんと目線を合わせる。山田さん、近くでみると思っていたよりも小さいな……。

「あのね、山田さん」
「山田、離れませんよ!」
「そっか。でもね相馬くん、16歳の若い女の子にそうやってベタベタひっつかれちゃうと、興奮しちゃって仕事にならないみたいなの。離してあげてくれないかな?」
「都城さぁん!?」

眉尻を下げ、少し困ったように笑いながら山田さんにお願いしてみる。相馬くんは、驚きやら絶望やらでこの世の終わりみたいな顔をしていた。すごく面白い。そんな相馬くんにひっついていた山田さんは、軽く引きつつ「や、山田……お仕事……してきます……」と言い走り去ってしまう。

「山田さん!! 待って! 誤解だけ解かせて!!」

相馬くんの切実な願いも虚しく、ぽぷらちゃんたちのいる休憩室の方から「聞いてください!! 相馬さんが……! 相馬さんが……!」と山田さんの声がした。

「うわあああああ……! 都城さぁん……!!」
「山田さんとベタベタしてるから、嫉妬しちゃった。あと、二人の時は、つくしちゃんでしょ?」

微笑みながらそう言えば、「……つくしちゃんは鬼畜だね。妬いてもいないくせに」と苦々しい顔で言われた。

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