空恋模様 | ナノ


新しいネタ(同僚)と話してみました。 [ 7/13 ]


(何か面白いことないかなー)

そんなことを思いながらキッチンでフライパンを動かしていると、小鳥遊くんが目に入る。彼は、新人なのにも関わらず、慣れた手つきで皿を拭いていた。
そういえば、小鳥遊くんについて全然知らない。話をするのも仕事の時だけだ。
ぱっと見は真面目な好青年って感じだけど、一体彼はどんな人なんだろうか。ギャップのある人ほどネタにしやすいものの、好青年には苦い思い出もある。人の秘密を握って、笑顔で脅迫してくるような人じゃなければいいけど……。と、誰かさんのことを頭に思い浮かべた。
さて、そんな誰かさんのことは置いといて。漫画のためにも、小鳥遊くんがどんな人か知るべきだろう。もちろん、同僚と仲良くしたい気持ちもある……二割くらい。
自分の中で申し訳程度の言い訳をしながら仕事を終わらせ、いざ小鳥遊くんの元へ。

「小鳥遊くん」
「はい、なんですか? 都城さん」

小鳥遊くんも、隣にいたぽぷらちゃんも、不思議そうな顔をしていた。今まであまり交流がなかったのだから、当たり前だろう。

「私、小鳥遊くんとあんまりお話したことなかったなぁと思って。だから、世間話でもしてみようかなと」
「都城さん、つかぬことをお聞きしますが、仕事は……?」
「今、お客様誰もいないじゃない。あ、もちろんその仕事が終わってからでいいのよ? それに、小鳥遊くんさえ良ければで」

何だろう、この小鳥遊くんの希望を少し取り戻した様な眼差しは。

「……普通の人も、いたんですね……!!」
「あぁ……そういうことね。変わり者だらけで、大変だったでしょ?」
「はい! 俺……もう先輩くらいしか癒しがなくて……!!」
「確かにぽぷらちゃんは、普通に可愛いもんね」

小鳥遊くんは相当溜め込んでいたようで、店長が横暴でひどいとか、轟さんが帯刀だとか、まひるちゃんに殴られるとか、山田さんのさぼりがひどいとか、相馬くんに秘密握られてるとか、なんやかんや爆発させていた。ちなみに、ぽぷらちゃんと佐藤くんは問題なしなようである。
そして最後に、「先輩がいなければ、やめてましたよ! ここのバイト!!」と言った。

「さっきから思ってたけど、小鳥遊くんってぽぷらちゃんに対して、癒しとか大切に思ってるみたいなことを平気で言えるのね」

さあ、指摘されてどう反応するのやら。恋愛感情からの小鳥遊くんによる熱烈アプローチだったとしても面白いし、尊敬からの行動だとしても面白い。ここでの反応で、小鳥遊くんがどういうタイプの人間か、そしてぽぷらちゃんとのホントの関係が分かる……! ぽぷらちゃんの反応からも読めるだろうし、これはいいチャンスだ。

「平気でって……当たり前じゃないですか。だって、先輩はこんなにちっちゃくて可愛いんですよ? ちっちゃいものを褒めるのに、恥ずかしさも何もありませんし……」
「……ん?」

当然、と言った風に言ってのける小鳥遊くん。あまりにも予定外の返答に、少々困る。これはこれで面白いが、どう反応することが正解なのだろう。今小鳥遊くんが、ナチュラルにロリコン宣言した気がする。とりあえず、恋愛感情……でいいのか……?
私の反応をみてフォローしようと思ったのか、ぽぷらちゃんが焦りながら話し始める。

「あっあのね! かたなしくん、他の人よりちょっとだけ、小さい物が好きなの。だから、私のこともちっちゃいって……ちっちゃくないよ! ちっちゃくないけど! でも、えっと……」
「言いたいことは分かったから、落ち着いて……」

あわあわしだしたぽぷらちゃんを宥め、自分が小さいとは認めたくないんだな……と微笑ましく見守る……場合ではなく。小鳥遊くんをフォローしたいと言うぽぷらちゃんの心意気は、尊重してあげなくてはならない。

「小鳥遊くんは、少し小さくて可愛い感じの物が大好きで、ロリコンとかそういう訳じゃない……のよね?」
「そうなの! だから、引かないで……というか……なんというか……」
「もちろん引かないわよ。ちょっとびっくりしただけだから、大丈夫」
「そっかぁ、よかったぁ!」

小鳥遊くんのために、満面の笑みを見せるぽぷらちゃんにきゅんとする。思わず頭に手を伸ばそうとした時に、隣から「先輩かわいい……」なんて呟きが聞こえてきた。
声の方を見てみれば、ぽぷらちゃんに異常な熱視線を送る、恍惚とした表情の小鳥遊くんが。

(これは……恋愛感情というよりも、信仰心に近いのかもしれない……)

そんな事をふと思い、想定外ではありつつも、より面白そうなことになっていそうで、密かに心が踊ったのだった。

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