空恋模様 | ナノ


カップルらしいことをしてみましょう。 [ 6/13 ]

ある程度の買い物−−私の予想に反して、足りない画材は案外少なかった。シャーペンの芯を二箱に、消しゴムを買ったくらいだった。−−を済ませ、ワグナリアに近づいてきた頃、相馬くんが「そろそろつくしちゃん、先に行きなよ」と言ってきた。

「……博臣くんってば、ド定番のとこ行くわねー」
「そんなこと言って、つくしちゃんもやる気だったんでしょ?」
「まあそうだけど」

「ほらほら、早くしないと誰かに見られちゃうよ」なんて急かす相馬くんに、「はいはい、じゃあお先に」と軽く返事をし、ワグナリアへ小走りで向かう。言わずもがな、ドラマなんかでよく見る隠れて同伴出勤するカップルの真似である。

「おはようございまーす」

忙しくなる少し前の午前11時。裏口から入れば、目の前にはぽぷらちゃんが。

「あ、都城さん! おはようございます!」
「おはよう、ぽぷらちゃん 」

「着替えてくるね」と言い、休憩室の方に歩こうとすると後ろから相馬くんの声がした。

「あ、相馬さんも! おはよう!」
「おはよー、種島さん……と都城さん」
「あら、おはよう相馬くん」

白々しいなーなんて思いつつ、「あら」とか言える私は、かなりの演技派ではないだろうか。
これ以上相馬くんといると、笑いが堪えきれなさそうだったので、一先ず更衣室に退散する。

「あー……面白かった……」

更衣室に入ってから誰もいないことを確認し、 一人呟いたのだった。

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