三万打記念リクエスト | ナノ


仲良し兄妹 [ 4/4 ]

「お、及川名前さん……! 俺と付き合ってください!!」

顔を真っ赤にしながら頭を下げる、隣のクラスのなんとかくん。(名前は覚えてない)
今までと違って、えらく純粋そうな子が来たな〜なんて思いつつ。

「私ね、お兄ちゃんがいるの」
「? ……三年の及川徹さんだよね?」
「そう。でね、私は兄の徹が大好きなの。すごく」
「うん……?」
「誕生日も〜、クリスマスも〜、その他の特別な日は、ぜ〜んぶ、徹と一緒に過ごしてるの」

頬に手を当て、うっとりとした笑顔で話すと、なんとかくんは困惑した表情をする。そりゃそうだよね。告白したら急に兄自慢だもん。

「私、今彼氏いないし、キミとお付き合いするのは、なんら構わないんだけどね。私の彼氏になるってことは、永遠の二番手になるってことだって、わかっててほしいの。それでもいい?」

にっこりと私的に一番可愛いと思われる笑顔で告げれば、なんとかくんは「えと、じゃあ……すみません、取り消します……」とすごすご帰っていった。

○○○

「って、ことがあったんですよねぇ」

所変わって、青葉城西高校男子バレーボール部部室。マネージャーである名前は雑談程度に、今日の昼休みにあった告白について話していた。

「名前は相変わらずだな……」
「相手のなんとかくん、かわいそうに……」

花巻、松川は名前も知らぬなんとかくんに同情するも、当事者の名前が不思議そうにしている。

「? なんでなんとかくん可哀想なんですか?」
「勇気出して告ったら、遠まわしにひっどいふられ方するんだろ? どう考えても可哀想」
「違いますよ〜! 今までの彼氏が、俺の事蔑ろにしすぎとか怒るから、私は親切にあらかじめ、あなたは二番手ですよって教えてるんじゃないですか」

「美人でかわいくて、親切で優しいなんて私すごすぎ〜」と笑いながら言う名前に、「こいつ、ほんと及川に似てるよなー……」なんて思いつつ、しかし口には出さない。

「名前ちゃーん! お待たせ〜」
「とーる、遅い!」

部室にてグダグダしていると、名前お待ちかねの兄、徹が帰ってくる。名前は嬉しそうに徹に駆け寄り、人目もはばからず抱きついた。

「あ、一くんもおかえり〜」
「おう」

徹の後ろにいた岩泉にも気づいたようで、声をかけるが、その間もずっと徹と名前は離れない。

「いつみても、こいつらの距離感おかしいわ〜」
「今更だろ」
「「そんなことないですぅ! 普通ですぅ!」」

徹と名前が声を揃えて言うと、他の三年は呆れたような目を向ける。
一通り引っ付いて満足したのか、名前は「じゃあ、外で待ってるから!」と部室から出ていき、徹はササッと着替え始めた。

「ごめん。岩ちゃん! 俺、今日先に帰るから!! 名前ちゃんとデートしてくるから!」
「わかったからはよ行け。名前待たせてんだろ」
「じゃあね! みんな! また明日!!」

1分とかからずに着替え終わると、徹は名前の元へと急いで向かう。名前は待ちくたびれたとでも言わんばかりに、部室前で徹にもたれかかり、どちらともなく自然に手を繋いだ。

「なあ、岩泉」
「なんだよ」
「あいつらって、手繋いで下校してんの? いつも?」
「登校も、買い物も、全部基本はな」
「まじかよ……」
「ほんとに恋愛感情ねぇの? 及川兄妹」
「ねぇよ。お互い恋人いたこともあるし。単純に仲いいだけ」

今年入学したての名前と、今までとは全く印象の違う徹(シスコンなのは知っていたが)に、多少の困惑はするものの、いずれは慣れるんだろうなぁ……と、遠い目をする花巻と松川だった。

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