にゃんこの襲来 | ナノ


おかしな好物を持つ彼女 [ 6/7 ]

及川くんとの縁があってから、私は欠かすことなく毎日挨拶を続けている。あまりしつこい感じを与えないように、時間はずらして、あくまでさり気なく。そんな生活を始めて早一ヶ月。なんと放課後に、彼から呼び出しを受けていた。

「お待たせしました及川くん。お話ってなんですか?」
「全然待ってないよ。ここで立ち話もなんだし、移動しよっか。前のお店でいい?」
「はい、では行きましょうか」

昇降口にいる生徒……主に女子からの視線が痛い。ビシバシと突き刺さるようである。視線の色は憧れだったり、好奇だったり、嫉妬だったりと様々だ。こんな目立つ所での待ち合わせを提案してくれた及川くんのおかげである。

「ふふっ」
「どうかしたの?」

つい漏れた笑い声に、及川くんはとても不思議そう。

「つい楽しくなっちゃって……」

適当にそれっぽく返して当たり障りのない雑談をしていれば、いつものお店へ到着する。さっさと注文を済ませ、この前と同じ隅っこの席へ座った。

「さて」

一息ついてから猫かぶりをやめる。じろりと及川くんに目をやり、「何のようですか」と訊ねた。

「いや、最近ずっと栗田さんが俺のこと見張ってるからさ。そんなに見張らなくても、ばらす気ないよっていう……」
「見張る?」
「うん。初めて話した日から、毎日話しかけてきてるでしょ?」
「あれ、別に見張ってるわけではないんですけど」

私の言葉に、及川くんはポカンとしている。見張るだなんて得にもならない面倒なこと、私がやるわけないのに。

「俺が言いふらさないか信用ないから、毎日話しかけてプレッシャー与えてたんじゃないの!?」
「何の被害妄想ですか、それ。違いますよ。ただ私は妬まれようと思ってるだけです」
「……はい?」
「言ってませんでしたっけ? 私、妬みとか、嫉妬の感情が大好きなんです」
「えっと……」
「及川くんと話せば、妬まれる機会も増えますから。ただそれだけですよ」
「そ、そうなんだ……」

面食らったような顔をする及川くんに、にっこりと微笑んでみせ「これからも、私の楽しみに利用させてくださいね?」なんて言ってみれば、乾いた笑みだけが返ってきた。

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