大きなびせいぶつ | ナノ


再会

入学式も、初めてのホームルームも全て終わり、後は祓魔塾に向かうだけだと、長い話でだらけきった体に鞭をうち、教室の扉を開けたその時。

「わっ!」
「うわっ!」

目の前に急に女の子の頭が現れて、ぶつかりそうになる。俺は慌てて「ごめんなぁ、大丈夫?」と声をかけると、彼女は笑いながら「こっちこそ、ごめんなさい! 全然前見てへんかったわ〜」と聞き馴染みのある、地元の方言を話した。

「「って、関西弁……?」」

二人の声がハモリ、女の子が顔を上げる。その顔は、つい先日夢に見た、幼い頃の小杉の面影があって。

「……志摩!?」
「もしかして、小杉……か!?」

お互い目を見開き、傍から見れば少々間抜けな状態である。

「なんでこんなとこおるん!?」
「そっちこそ! 私は東京引っ越してきたから……!」
「俺は、東京でやることあってん! まさかほんまに会えるとは……」
「ていうか、頭どしたん? ピンクてアホみたいやで。不良デビューか!」
「うるさいわ! 女の子はピンク好きやろ!」
「……もう手遅れやったな。アホみたいやなくて、完全にアホやん」

カラカラと笑う小杉に、軽くデコピンをお見舞いすると、「いった!」と大袈裟にデコを覆い、恨めしそうな視線を送ってくる。
この前まで見ていた夢は、予知夢だったとでも言うのだろうか。こんなところで小杉と再会することになるなど、全く想像なんてしていなかった。
改めて小杉のことを見てみると、なんだか彼女と俺の視線がやけに近い気がする。

「なんか……小杉デカない?」
「あ、やっぱり? わかる?」

ふふん、と得意気な顔をした後、少し溜め、勿体ぶりながら意気揚々と話し出す。

「私なぁ、今、身長168あるねん! どや! もう誰にもチビなんて言わせへんで」

これぞまさにドヤ顔。そう言っても過言ではない表情に、俺は圧倒される。たった数年で、人間とはこんなに成長するものなのだろうか。

「うそやろ……?」
「嘘ちゃうわ! 見たらわかるやろ! 中学からバスケやってたら、めっちゃ伸びてん!!」

俺の目線より少し下、他の女子よりはるかに近い彼女の目。子猫さんの身長なんて、ゆうに越している。

「いつか志摩の身長も抜いてまうかもな?」

いたずらっぽく笑う彼女をみて、俺は、小さくて可愛らしい見た目の彼女に惹かれていたのに……なんて思ったけれど、今の大きな彼女に惹かれ始めているのも事実で。
身長の比率以外は、昔と何も変わらない小杉に少し安心し、結局当時から、見た目よりも彼女の内面に惹かれていたんやななんて、今更ながらに自覚した。

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