大きなびせいぶつ | ナノ


_幼い俺と少し大人の俺

小学校生活四度目の春がやってきて、俺は晴れて高学年への仲間入りを果たした。金兄は「小四なんかまだ中学年じゃ! 高学年なんて早いねん!!」などと言ってたけど、そんなもん関係ない。金兄がなんと言おうと、世間一般では立派に高学年なのである。(中学年でもあるけど)
坊と子猫さんとは登校班が同じなので、そのまま三人で靴箱に貼ってあるクラス表を見に行く。

「名前、ありました〜?」
「自分でも見ぃや!」
「坊と俺、名簿近いから、坊が見てくれた方が早いやないですか」

坊が呆れたように「お前は……」と呟いたけど、へらへら適当に流しておく。
今まで真面目に探していた子猫さんは、俺らに一瞥くれたあと、またクラス表を見る作業に戻ってしまった。

「えっと……あ! 坊と僕は二組みたいです」
「ほんまや! これから一年間、頼むわ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「え〜、俺だけ仲間ハズレやん」

渋々と自分でクラス表を見ていけば、俺の名前はすぐに見つかって。

「……俺、三組ですわ」
「結局隣かいな」
「まあええやないですか」

三人で教室の前まで行き、そこで二手に別れる。と言っても、隣の教室なので、そんなに大層なモノでもない。三組の教室は、半分くらいの人数が集まっていて、既に友だちのグループが出来ている所もあった。

(誰かおるやろか……。適当に馴染めるとは思うけど)

そんなことを思いながら、教室の入口から中をぐるりと見渡す。すると、後ろから肩を叩かれた。

「なあ、そんなとこおったら、教室入りにくいんやけど。席わからんの?」

振り向いてみて、びっくりする。俺に声をかけてきたのは、春休み中、俺の股間に蹴りをあびせた小さい少女だったのだから。

「え!?」
「ん? ってあ!」

俺が驚きの声を発すると、彼女も俺に気づいたようで、お互い次の言葉が出ない。びっくりしたまま固まっていると、少女はふいと目を逸らし、もう一度俺の目を見てから、手を出した。

「……この前は急に蹴ってごめん。あと、助けてくれてありがとう。小杉千衣子って言います。よろしゅう」

彼女……小杉千衣子の出した手が、握手を求めているのだと、その時気づく。俺は突然のことに戸惑いつつも、おずおずとその手を握り、「俺は志摩廉造っていうねん。こちらこそよろしゅう」と自己紹介を終えた。

○○○

小杉と出会って二ヶ月ほど。俺たちは、よく一緒にいることが多かった。最初こそなりゆきで一緒にいたのだが、その内に小杉と馬が合い、お互いに好んで二人で過ごすことが多くなった。
小杉との遊びと言えば、もっぱら外遊びで、周りの女の子みたいに「家でおままごとしよ〜!」とか、「○○くんかっこいいよなぁ!」みたいな雑談とかは、全くなかった。
実際、そんな男勝り……というか、女の子らしくない彼女といて、気が楽だし、楽しかったのだが、“女の子らしいそういうこと”に全く興味がないのか、男の俺といて本当に楽しいのか、と子どもなりに疑問に思うことはあった。
しかし、そんなことは普段は気にならず、ふとした時に思う程度であり、基本的には二人で辺りを走り回ったりすることが多かった。
そんな日々を送っていくうちに、二つ気づいたことがあった。
一つは小杉の気が少し……いや、かなり強めなこと。これは、春休みに出会った時から、若干思ってはいたけど。
そして、もう一つ。毎日放課後に聞ける、彼女の「また明日、遊ぼうな!」という言葉と満面の笑みが、とても可愛い……というか、なんとなく惹かれてしまうということ。

(小杉のことが、異性として好きなわけではないけど!)

なんて必死で言い訳していた小学生時代だったが、今になってみれば、彼女を好きになり始めていたんだなぁ、と。当時より少し大人になった俺は思うのだ。

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