大きなびせいぶつ | ナノ


_衝撃的な出会い

「あ! また小杉が見えへんくなったで〜!」
「ほんまや! チビやからよう見失うわ〜!!」

子供特有のキャハハハという甲高い笑い声が響く昼間の住宅街。三月の終わりらしい気持ちの良い暖かさを感じながら、俺はおつかいの帰り道を(気持ち)急いでいた。
はよ帰らな、おかんがキレる。一度、何かのおつかいの帰りに寄り道をして、大幅に帰宅時刻が遅れたことは記憶に新しい。……その時にしこたま怒られた記憶も、もちろん鮮明に残っている。

「うるっさいわ! ここにおるやろ!!」
「え〜? 声しか聞こえへんよなぁ?」
「おん、声しか聞こえへんわぁ」
「こっち向いてるやろ!」

さっきから、女の子の声と、男の子の声が2つ。何か喧嘩でもしてる……というより、女の子が弄られてるようで、ぎゃあぎゃあとやかましい。

(宝生さんとことの喧嘩よりかはましか……)

なんにせよ、他人のことやし、ほっとくべきやろう。女の子には気の毒やけど、俺はおつかいと言う名の任務真っ最中なのだ。それに、女の子の声を聞いてる感じやと、男二人に引けを取らへんみたいやし。
と、そう思い面倒ごとから逃げようとしたのがあかんかったんやろうか。

「飛び降りよった!!」
「やっぱり見えとるやん! 私は忙しいからあんたらに構ッ!?」
「え、うそやろ……!?」

俺の上には人影が。隣の少し高い位置にある神社の石垣から飛び降りたんやろう。しかし、少し高い位置と言っても、それは大人目線の話であって。小学三年生の俺からすれば、160cmはありそうな石垣から飛び降りるなど、自殺行為に等しいものである。
女の子やのに、ようやったな〜……なんて頭のどこかは嫌に冷静で、それなのに体は動かない。俺の頭上の女の子は、焦ってどうにかしようとするけど、俺との接触までは僅か25cmほど。そんなところでどうにかできる訳もなく。
すんでのところで受け止めようとしたものの、俺は、見事に女の子の下敷きとなった。

「ぅぐふッ!!」
「いたたた……」
「うわっ、人の上落ちとる!」
「ええからはよ逃げよ! こんなん怒られる!!」

ぱたぱたと二人の男の子が走り去り、残されたのは潰れた俺とその上に尻餅をつく女の子。勢いがついてて痛かったけど、思ったほど重くないなー……と女の子には失礼な体重のことを考える。

「あ、ごめんなさい!! まさか、下に人おるとは思わんくて……」
「ええよええよ〜。受け止めれんくて堪忍なぁ」

慌てて飛び退いた女の子が手を差し伸べてくれたので、迷わずにその手を借りて立ち上がる。立ち上がって少女の方を見てみれば、俺よりもかなり小さくて。この年頃やと、女の子の方が大きかったり、一緒くらいのことが多いのに、と思っていた俺は、思わず言ってしまっていた。「小さっ……」と。

「なんッやとぉ! 誰がチビじゃ、コラァ!」

今までの申し訳なさそうな態度から一転。女の子が一歩踏み込み、怒声に合わせて足をフルスイングする。その足は俺の足の間を通り、きれいに股に吸い込まれていった。

「いッ……たァァァァァァ!!」

文字通り悶絶するほどの痛みに思わず蹲ると、女の子は満足げに鼻を鳴らした。
これが小杉と俺の出会いである。

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