2-3 相馬



目の前には、満面の笑みの相馬くん。相馬くんの右手は私の顔の横。左手も私の顔の横。そして、後ろには男子更衣室のドア。
俗に言う、壁ドンというやつですね。
さて、何故私はこのような状況に陥っているのだろうか。
バイトの休憩室にて、休憩していると相馬くんがやって来た。相馬くんに立つように言われて、その通りに立てば壁に追いやられた。そして壁ドン。
……うん、わからん。私、相馬くんに何かしただろうか……? でも、そんな覚えはあまりない。今までも“バイト先の同僚”というそこそこの関係を保っていただろうに。
相馬くんなどそっちのけで考え込んでいると、「あの……」と相馬くんから声をかけられた。

「なに?」
「……照れも何もしないんだね」
「まあ……そりゃ……二十歳にもなればね」
「二十歳でも照れる人は照れると思うけどなー」
「じゃあ、私は照れない人ってことじゃないの?」
「いや、そうなんだけど」

「うーん」と悩む相馬くんが、何をしたいのか全くもってわからない。

「相馬くんは何がしたいの?」
「えー? まあ、同僚のことをよく知りたいだけ、かな」
「あぁ、弱味を探したかったのか」
「ひどいなー」

とりあえず、相馬くんの目的はわかったものの、この状態から解放はしてくれないようだ。そろそろ休憩時間が終わってしまうし、解放していただきたいのだけども……。

「相馬くん、放してくれる気はないの?」
「人に見られそうになったらどう反応するか、とかもみたいかなって」
「大声で人呼べばいいの?」
「それだと俺が危ないよね」
「どう足掻いても、相馬くんが悪くなっちゃうと思うけど……」

相馬くんはしばらく私を解放する気はないらしい。だからといって、相馬くんを悪者にするのも後が面倒だし、気が引ける。

(困ったなー……)

キョロキョロと視線を巡らせれば、目に付いたのは男子更衣室のドアノブで。
少し考えてから、ドアノブをひねった。
ドアは予想通り、相馬くんの押す力と私の体重によって内側に開いていく。

「えっ!? ちょ!」
「あ……」

これ、私も危ないな……とか、やっしまってから気づくあたり、私はおバカさんなようである。
物凄い音がして二人とも盛大に転けてしまったのだが、なんとか相馬くんの拘束からは解放された、が。
結局、この時の音のせいで、駆けつけた小鳥遊くんに事情を説明しなくてはならず、相馬くん共々怒られてしまった。
今後は、人を巻き込む弱味探しなんてやめていただきたいものである。

[ 3/3 ]


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -