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噂の彼女とプランスタート


谷地が着替えを済まし、第二体育館へ行けば、「谷地さーん!!」と大声で駆け寄ってくる人物が。日向だ。最初はびっくりしていたけど、今ではもうすっかり慣れてしまったなぁ、なんて感慨にひたりつつ。

「どうしたの? 日向」
「この前坂本さんに教えてもらったとこ、テストで合ってた!」
「ほんと! おめでとう!!」
「うん! だから、お礼言っといてほしいなって」

キャッキャッとはしゃぐ小さい二人に、後から来た山口が「日向も坂本さんのこと、知ってるの?」と話しかける。

「うん、知ってる! 数学教えんの、すごい上手かった!」
「へ〜、そうなんだ。なんか意外……」

最後の“なんか意外……”はぽつりと呟いたつもりだったのだが、日向にはばっちり拾われていたようで。

「山口も坂本さん知ってるの!? てか、なんで意外?」
「うん、昨日ツッキーと俺のところに、挨拶? に来たんだよね。その時の印象で、あんまり勉強教えたりするように、見えなかったから……」

坂本の友人である谷地がいる手前、馬鹿そうだったとも取れるような発言は避けたかったのだが、日向がそこまで空気を読んでくれるはずもない。
なんとなく気まずくて、ちらりと谷地の様子を窺えば、ニコニコしながら「麻里ちゃん、よくそう言われてるみたい」とあまり気にすることもなさそうだった。

「あ! 月島〜!!」
「……何?」

少ししてからやって来た月島に、それはそれは大きな声で話しかけ、苛立たせる日向。谷地と山口がハラハラしつつ、事の成り行きを見守る。

「月島も坂本さんと会ったんだよな!?」
「会ったけど……それが何?」
「坂本さんのこと、どう思う!?」
「はぁ?」
「だから! どう思ったって!」

(日向、それじゃ、聞きたいことの……意味合いが若干変わっちゃうんだよ……!)

谷地が内心こんなことを思っていようと、思っているだけでは日向に通じるわけもない。山口が隣で微妙な顔をしているので、きっと同じようなことを思っているのだろう。

「山口、どういうこと」

早々に日向じゃ話にならないと判断した月島は、山口に事情を聞く。谷地と顔を見合わせてから、今までの経緯を説明すると、月島が盛大な溜め息をつくのだった。

「なんで溜め息つくんだよ!」
「君が馬鹿だからだよ……」
「なんだよ!! で、坂本さんのこと、どう思った!?」
「変わった人、というか……反応がオーバーだな以外には何も」
「え、それだけ!?」

「そんなに話してないし」とだけいい捨てると、さっさと日向達のもとを去ってしまう。

「面倒だから逃げたな、ツッキー……」

山口の口からは、思わず呟きがこぼれたのだった。

○○○

「昨日ね、日向が数学で教えてもらったところ、テストで合ってたって」
「! へ〜、よかったね」
「うん、で、麻里ちゃんにありがとうって」
「ほんと、理解してもらえて良かったよ……」
「あ、それでね!」

あはははは……と苦笑いを浮かべつつ、話を切り替える仁花に乗り、ここはそのまま相槌を打つ。日向の頭の話題はこのまま広げてもいい事がないだろう。

「どうしたの?」
「昨日、その話してたら、そこから麻里ちゃんの話になってね。その時に月島くんが麻里ちゃんのこと“変わった人っていうか、反応がオーバー”って言ってたよ」
「お、おぉ……。それは喜んでいいのか、どうなのか……」

仁花が喜々として報告してくるので、私はどう反応するべきなのかわからない。え、少なくとも褒められてはないよね? それとも、月島くんなりの褒め方なの……!?

「喜んでいいと思うよ! だって嫌われてる訳じゃなさそうだし!」
「……それもそっか」

そういえば、後日、仁花づてに聞いた月島くん情報だと、月島くんは誰にでもあんな態度らしいし……。ちなみに、仁花は山口くんから聞いたようである。

「私、特別嫌われてる訳じゃないんだよね……?」
「? うん、そういうことじゃないかな?」
「……いーこと思いついた!」

ニヤリと笑った私に、不思議そうな顔をする仁花。頭上には沢山のはてなマークを飛ばしているけれど、まだ何も教えないでいよう。
さあ、みんなの反応が楽しみだ!

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