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ひねくれ問題児とエンカウント


「ふぅ……。さっきは恥ずかしかった……」

仁花の元へ戻れば、「おかえり、麻里ちゃん」と可愛らしく微笑んでくれる。この子、ほんとにいい子だわ……。妹か娘に欲しい。あ、案外お姉ちゃんでもありかも。なんてどうでもいい事は置いといて。

「仁花が大丈夫なら、そろそろ行こっか」
「うん、いいよ!」

ミルクティーにストローを差し込みつつ、隣の四組前へいざ出発。廊下から覗いて、例の月島くんと山口くんとやらを探す。

(山口……くん……?)

そういえば、先ほどぶつかった彼も山口くんという名前だった。そして四組の生徒でもあった。もしかして……。ふと脳裏をある考えが過ぎったその時、仁花に肩を叩かれる。

「あの背の高い金髪でメガネの人が月島くん! で、その隣の背が高めで黒い髪の子が山口くん!」
「え゛」

思わず、女子としては有り得ない声がもれた。月島くんは知らないけど、山口くんは想像通りさっきぶつかった男の子じゃないか……。

「ちょっと呼んでくるね」
「あ、まっ……!」

止めようとした私の手は虚しく宙を掻き、仁花が月島くんたちの元へ行ってしまった。月島くんはともかく、山口くんに会うのが非常に気まずい。個人的に。
うんうん頭を唸らせながら、何とか気まずくない方法を考えるものの、何も思いつかない内に仁花が戻ってきてしまった。

「話したいことがあるならどうぞって! 行こっ」
「う、うん……」

どうしたものか。半ば仁花に引きずられるように、月島くんと山口くんの元へ連れていかれる。と言うか、一目見るだけでよかったのに……なんて今更思ってみてももう遅い。
仕方なしに二人の前に行けば、「あ、さっきの……」と山口くんが呟いた。案の定、忘れていないようだ。

「さっきは、ごめんなさい……!」
「え、いやいや! こっちこそ……!」
「何、山口。知り合い?」

怪訝な表情をする月島くんと、不思議そうにしている仁花。反応一つにしても、こんなに違うものなのか……なんて思ってみたり。

「違うよ、さっき廊下でぶつかっただけ。ね」
「うん、そうなの。一年五組、坂本麻里です。仁花がいつもお世話になってます。よろしくね」

一先ず自己紹介をして、様子を伺う。山口くんは微笑みながら「さっきも言ったけど、俺は四組の山口忠。で、ツッキーが月島蛍。よろしくね、坂本さん」と再度自己紹介してくれた。なんていい人なのだろうか。
月島くんは私に会釈をし、依然訝しげな視線をぶつけてくる。…………月島くんは問題児……なんだろうなぁ……。
今までの仁花の話を思い出しても、日向や影山くんをバカにしていたとか、そんなんしかない気がする。たまに仁花を手伝ってくれてたみたいだけど……。

「で、何の用なの? 僕、そんなに暇じゃないんだケド」
「え……」

月島くん、初対面の人にもこんな態度とれるんだ……。ある意味すごい……。呆気にとられていると、仁花が慌てて事情説明をはかる。しかし、彼に事情説明をしたところで、おそらく状況はかわらないだろう。雑談も出来なさそうだし。

「あー! ごめんね! 仁花と私、用事があったんだ!! またね!」

そう叫んで、仁花の手を引き急いで五組に戻った。山口くんはいい人だけど、月島くんと関わるときは要注意だな……と肝に銘じながら。

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