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知らぬ間にエンカウント


日向と影山くんに遭遇した次の日。なんとなく気になった私は、仁花に聞いてみた。バレー部男子はバカばっかりなの? ……と。

「え!? ううん!! そんなことないよ!」
「ほんとに? でもさ、バレー部一年は仁花含め五人でしょ?」
「うん」
「そのうち、二人は壊滅的なバカだったんだよ? 仁花は勉強できるとしても……ねぇ……」
「か、壊滅的なバカって……」

仁花は曖昧な笑みを浮かべつつ、何かフォローする方法はないかと探している。しかし、あの二人が壊滅的なバカなのは覆しようのない事実なので、早急に諦めるべきじゃなかろうか。

「あ! 日向と影山くんはちょっと……アレだけど! 月島くんと山口くんは4組で進学クラスだよ!」
「……仁花、それは結局フォローになってない」
「あっ……!」

「あわわわッ」と、ネガティブを発動させそうになる仁花を落ち着かせる意味も含め、改めて話しかける。

「ねぇ、仁花」
「な、なぁに?」
「今日の昼休みさ、4組の月島くんと山口くんとやらを見に行きたいんだけど、付き合って欲しいな。私じゃ誰かわかんないし」
「うん、全然いいよ!」

仁花との約束を取りつけ、なんだかんだで昼休み。「先に飲み物買いに行ってくる」と私が言ったため、今は自販機の前だ。

「うーん……えいっ」

ボタンを押すと、ゴトンと紙パックジュースの落ちてくる音がする。普段はレモンティーを買うけれど、今日は趣向をかえてミルクティーだ。
さあ、仁花の待つ教室まで急いで帰らなければ。くるり、と方向転換をし教室の方へ向かうと、曲がり角で何かにぶつかる。

「うぶッ」
「うわぁ!」

ガサガサっと何かが落ちる音が響き、男の子の声が聞こえた。そろりと顔を上げてみれば、私は見知らぬ男子生徒の胸元に突撃している。

(変な声出て恥ずかしいし、突撃したのも恥ずかしいし……)

思うところは色々あるが、とりあえず、謝らなくては。「ごめんなさい!!」と頭を下げると、男子生徒は「こっちこそごめんね!」と言い、優しく微笑む。
いい人だなぁ、と目を奪われていると、彼はしゃがみこんで周りに散らばったパン類を拾い始めた。

「わわっ、ごめんね! 私が拾わなくちゃいけないのに……」
「そんな、気にしなくても……」
「気にするよ! なんなら弁償するよ!?」
「いやいや! そこまでじゃないから!」
落ちたものを拾い集め、 数を確認する。無事に全て拾えていたようで、ほっと安堵の息をついた。

「ほんとに弁償しなくて大丈夫?」
「うん、大丈夫だよー」
「そっか! あ、私一年五組の坂本麻里。何かあったら、遠慮なく言ってね。私のせいだし……」

念のためにと名前を告げると、向こうは笑いながら「俺は4組の山口忠。何もないと思うけど、一応名前だけ伝えとくね」と言い
4組の教室に入っていった。
4組の生徒さんだったのか……なんて思いつつ、私も仁花の元へ帰る。
それから数十分後、ぶつかった山口くんは、件のバレー部の山口くんだと知るのだがそれはまた先のお話。

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