enjoy リアリティ! | ナノ


私のリアリティ


私のクラスメイトであり、友人の谷地仁花は消極的で、ものすごくネガティブ思考である。
そんな彼女が、最近男子バレーボール部に入部した。それを聞いた当初は大変驚いたのだが、仁花から進んで何かを始めることは珍しく、すぐに応援することにした。
さてさて、そんな仁花が頑張っている話は置いといて。
私こと、坂本麻里はとてつもなく悩んでいた。

「はぁ……」
「麻里ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃなぁい……」

机に半分項垂れるように突っ伏し、溜め息を吐く。隣で仁花がいつものネガティブを発動させ、「麻里ちゃんが……! 大変な事に!」とあわあわしているが、今はそれに突っ込む気も起きない。

「どうかしたの……?」

ガバッという擬音が聞こえてきそうな程に勢い良く顔を上げる。「ひぇっ!?」と引き気味の仁花に若干の申し訳なさを感じつつ。

「聞いてくれる!?」
「う、うん……」
「あのね、今何月か知ってる?」
「え……? 7月……だよね……?」
「そう、その通り。7月です。これが何を意味するかわかる?」

頭上に沢山の疑問符を飛ばしながら、首をひねる仁花をみて、 また溜め息を一つ。

「ご、ごめんね……!」
「いやいや、予想通りだから大丈夫。さて、7月なわけだけど。今月末には何があるでしょう?」
「えっと…………夏休み……?」
「そう、その通り! はい、ここからが本題!! 私に彼氏がいますか!?」

先程よりも、更に勢い良く詰め寄ると、仁花はより引いていく。

「うぇッ!? い、いない……よね?」
「そう! その通り!! ご名答です!! いません!」
私の大きな声に、揃いつつあったクラスメイト達が驚き振り返る。しかし、声の発生源が私だと分かるやいなや、それぞれの喧騒に戻っていった。

「麻里ちゃん……?」

叫んで以降、黙って下を向いてしまった私に、おずおずとかけられる声。

「仁花ぁ……。私、どうしよう……!?」
「うひぃ!?」

仁花の肩にすがりつくように掴みかかる。仁花には悪いけど、もうそんなの気にしてられない。

「中学時代はさ、高校生になったら好きな人も彼氏も自然にできるものだと……思ってたのに……!! そんな空気は微塵もなく、クラスメイトからは変人認定されて! 遂には高校初の夏休みが迫ってるんだよぉ……!!」

「なんでこんなことにぃぃぃぃ!」なんて、ずるずるへたりこんでみても、私のこの現実は変わらない。
戸惑う仁花と嘆き悲しむ私。それを遠巻きに見ていた我がクラスメイト達は、(坂本、変わってる奴って自覚あったんだ……)などと思っていたのだが、そんなこと私は知る由もない。

prev / next


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -