つるりと滑る口



田中と西谷というバカ二人に妨害されてから、一週間ほどが経った。相変わらず、縁下と二人きりでしゃべる機会がなく、あの時あいつらさえいなければ……と毎回思ってしまう。
ここまできたら、メールやLINEで伝えるしかないのだろうか。いやしかし、せめて口で伝えたい。頭を抱え唸っていると、縁下に声をかけられた。

「……大丈夫か?」
「大丈夫……」

そもそもの原因は、縁下である。そんなこと、口が裂けても本人には言えないが。……そうだ! いっそのこと、縁下に聞いてみたらいいんじゃないだろうか。どんな告白の状況が理想か……とか!
思い立ったら即行動。私の良いところであり、悪いところでもある。もろ刃の剣というやつなのだが、今回はそんなこと全く考えずに行動開始。

「縁下はさ、えっと……告白したい? それともされたい?」

少し違うような気もするけど、話題として聞きたいことと遠いわけではない。これなら、話を繋げつつ理想のされたい告白状況を聞けるかもしれない。

「えっと……それは好きな人にってこと?」
「うん、そう! どうなの?」
「えー……うーん……」

ものすごく言いよどむ縁下。顔を見ても、明らかに困っていることがわかる。

「あ、ごめん。急には言いづらいよね!」

焦って何でもないとフォローしたら、縁下は決心したように「……俺は……自分からしたい、と思うよ」とこたえてくれた。
その縁下の顔は、先程までとはうって代わり、真剣そのもので。もしかしなくてもこれ、縁下には好きな人がいるんじゃなかろうかなんて、嫌な考えが頭を過る。

「あの、もしかしてなんだけど……好きな人とか……いる?」

気づいたら口からポロッとこぼれていて。あ、だめだ。こんなこと聞いて「いる」って言われたら、私はこれから告白する勇気を失ってしまうかもしれない。そんなことを思っても、一度言ってしまったことを取り消すなんて不可能である。

「あの……その……えっと……!」

慌てて何か言おうと思っても、次の言葉が何も出てこない。どうしようという思いで頭の中が埋め尽くされ、口からは言葉にならない言葉しか出てこない。
その間も縁下はずっとだんまりで、あまりにも静かだから心配になって恐る恐る「縁下……?」と呼んでみる。

「うぇ!? ななななんでもない! ちょっと用事思い出したから、行ってくる!!」
「へ!?」

そういうが早いか、席を立ち走り去る縁下。まさか、告白を察知したというの……!? (さっきはそんなこと、すっぽり頭から抜け落ちていたが)それとも、好きな人がホントにいて、私には言いたくない……?

「ぬぅぅ……。手強い……」

悔しげな呟きは誰の耳にも留まることなく、賑やかな教室に溶け込んでいった。

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