まさかの妨害に



昼休みになり、昼食を食べ終えてから縁下に声をかけると、案外素直に応じてくれた。そのことに驚きつつも、屋上の前階段へ向かう。ここは、あまり人がやって来ない。

「どうしたの? 話って」
「ちょっと聞いてほしいことがあって」

すぅ、と息を吸い、深呼吸する。どくんどくんとうるさくなる鼓動は完全無視して、縁下の方を向いた。

「あの……!」

私が口を開くと同時にガチャ、と屋上の扉が開く音がする。そして男の子がひょっこりと顔を覗かせ、「あ! 力!!」と叫んだ。

「……は?」
「お前、何してんだ? こんなところで」

でかい声で話しかけてくる背の低い男子に、開いた口が塞がらない。この場面で普通知り合いに出会す……!?

「ちょ、西谷……」
「って、女子と二人……!? まさかこくはッ」
「西谷ちょっと黙って!!」

ぎゃーぎゃーとうるさい西谷と呼ばれる男子に、ふつふつと怒りが沸いてくる。空気読んでよ……!

「えっと……」

引き攣る笑みを隠しもせず、声をかけると縁下が決まり悪そうに目をそらした。

「あー……ごめん」
「ううん、いいよ……。気にしないで……」

どちらとも悪くないので、お互いに言いようのない気まずさに苛まれる。その間も、西谷とやらはこちらの気まずさを歯牙にもかけず、大きな声で話し続ける。まさにゲリラ豪雨というか……。

「西谷、なんでこんなとこにいるの……」
「今日、天気いいじゃねぇか! だから、屋上で龍と飯食っててよ」
「え゛、田中もいるのか……?」
「それが龍が購買に行ってから、帰ってこねぇんだ。で、様子を見に行こうと 」

大体の状況は把握したものの、西谷とやらの事情を知ったところで私にはどうしようもない。いいから早くどっか行け。ただ一心にそれを思うばかりだ。
しかし、神様は私のことが嫌いなのだろう。これ以上に、告白するには向いてない状況をつくり出してくれたのだから。

「ん? 縁下? ……と、女子……!?」
「げッ、田中……」
「どどどどどういうことだよ! なんでお前が女子とこんなところに……!!」

田中と呼ばれた男子は、続けざまに「まさか告白……!?」と叫び、この人たち思考回路似てるなとか、ほんとに告白だからどっか行ってとか、デリカシー無さすぎるとか、色々思うところはあったのだが。

「ごめん、縁下。言いづらいし、また今度にするよ。急ぎでもないし……」

私は そう言い、教室に戻ることしかできないのだった。いくら雰囲気とか気にしないと決めていようと、これはあんまりにもあんまりだ。

「うん、わかった。馬鹿二人がごめんな」
「いやいや、気にしてないよ。縁下のせいでもないし、ここに連れてきたの私だし。じゃあ、先に帰ってるね」

表情筋を無理やり笑顔になるよう動かし、そのままパタパタと小走りに去る。縁下の手前、気にしてないとは言ったけど、私は絶対に西谷と田中とやらのことを忘れないだろう。もちろん、マイナスの意味で。

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