逃げられ唖然



新しいクラスになって、一週間。縁下とは今まで通り、友だちのままだった。
しかし、私は諦めた訳ではない。今日は金曜日。週の終わりなので、掃除の後はゴミを出しに行かなければならないのだ。
幸いなことに、私と縁下は掃除の班が同じだ。ゴミ出しに二人で行ければ勝機はある!
そんなこんなで、お待ちかねの放課後がやってきた。掃除の時間だ。掃除のない生徒たちが、部活に向かったり、帰路についたりする中、普段通りに掃除を進める。

「ねえ、これでゴミ全部ー?」
「多分ー」
「あ、じゃあ私、捨てに行ってくるよ!」
「ほんとに? 和ありがと」
「いえいえ、じゃいってきまーす! 先に終わってていいからね!」

クラスメイトと言葉を交わし、4つのゴミ袋を見る。「よっこいしょー」と女子高生に似つかわしくない声を出しながらそれを持ち上げると、後ろから声をかけられた。

「和泉、それ一人で持っていく気?」
「うん、そうだけど?」

声の主は予想通り縁下で。

「手伝うよ。いくら和泉でも、それは持てないだろ」

ほかの男子は、「ラッキー!」なんて言いながら部活に行ったのに、縁下は残ってくれて、さらには手伝いまで申し出てくれる。ここまで、すべて予想通り。縁下なら、きっとこうするだろうと信じていた。

「いいの? 私でもってのは気になるけど」
「さすがに女子一人を置いてけないし。和泉とは言え」
「縁下、さっきからひどくない!? そんなこと言うなら、3つ持ってもらうからね!」

元々持っていた一つを押し付け、もう一つ持ち上げる。「よいしょっ」またまた女子高生に似つかわしくない声が出たが、気にしない。実際、それほど重いのだ。

「3つも持てるー?」
「押し付けたのは和泉だろ……」

そんなことを言いつつも、軽く持ち上げて見せた縁下に軽く見惚れる。

「案外、力強いんだねー」
「重たいのはそれとこれくらいだしな」
「歩きにくそうではあるけどね」

「……こんな袋持ってるんだから、仕方ないだろ」少し拗ねたように言う縁下にときめきつつ、話を切り出す。

「あのさ、縁下。ちょっと話があるんだけど……」
「どうかした?」
「あ、あのね……!」

好きだと、気持ちを伝えようとしたその時。

「そういえば、和泉部活あったよな! 後はやっとくから、行ってきたら!?」

縁下にしては珍しく大きな声で、そんなことを言われた。
私の目は点である。半開きの口から「あ、えっ?」と空気が漏れるような声が出た。

「ほら、早く行ってきなよ! な!」

ゴミ袋を奪い、縁下は行ってしまった。そう、また逃げられたのだ。
放心状態の頭にその事実だけが、色濃く残ったのだった。

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