偶然から始まった



縁下との出会いは、ひょんなことからだった。
高校に入学し、同じクラスになり、一回目の席替えの後、隣の席になった。偶然に偶然の重なった、ただの偶然の出会い。
そこから、毎日挨拶をするようになって、それだけの仲だったのが、次第に少しずつ話もするようになって、一年生で二回目の席替えの後も同じように隣の席になって、徐々に親しくなっていった。
そのうちに、私と縁下は仲良くなって、二人で休み時間を過ごすくらいにはなった。
休み時間の度に必ず一緒にいるわけじゃないけれど、気が向いたときとか、勉強がわからなかった時とか、何かと縁下を頼ったり訪ねたりする機会は多かった。
一年生の夏休みが終わり、三回目の席替えがあった。流石に隣の席にはなれず、少しへこんだ。
この時に、自分の感情に少しの違和感を抱いたのだが、あまり気にせず過ごしていた。
この席になってから、縁下は部活のことが大変らしく、あまり話しかけられなかった。私自身、部活が上手くいっていたのもあって、余計にだった。
しばらくして。
四回目の席替えがあった。なんとまた縁下の隣の席だった。すごく心が躍った。

「また和泉の隣か……。まあ、よろしく」

呆れたような表情で言われたこの言葉に、とてもときめいてしまったのは、きっと気のせいじゃないだろう。
私は、いつの間にか縁下のことが好きになっていたのだ。
冬が来て、また席替えをした。一年生で最後の席替え。縁下とは離れてしまった。好きと自覚してから、一番堪えた。
一年生最後の日、教室に縁下を呼び出した。

「あ、あのね、縁下……」

顔が赤いのがよくわかる。

(いけ、和! 演劇部で培った度胸を今こそ使うのよ!)

自分を鼓舞しながら、顔をあげ縁下を見据える。震えを隠すために手をギュッと握り締め、口を開こうとしたその時。

「あの! ごめん、部活あるからもう行くわ!」
「へ?」
「ま、また今度!」

なんと縁下に逃げられてしまったのだ。

この日を機に、私と縁下の鬼ごっこが始まるのだった。

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