初志貫徹で



縁下に好きな人がいるのかと聞いた翌日。今は六時間目の国語である。窓から差し込む暖かい光に、眠気を誘われている生徒も多い。これが終われば、放課後だし部活! と普段ならウッキウキなのだが、今はとてもそんな気分になれなかった。
昨日と今日で合わせて一日と半分ほど、色々と考えてはみたのだが、縁下に好きな子がいるという可能性が消えることはない。
今まで、全く思いもしなかった。……というよりかは、考えもしなかったし、どこかで、考えるのを避けている自分もいたのだな、なんて。こんな女の子的思考、非常に私らしくないし、こんなしおらしい考えなんて普段ならしないのだけど、今日ばかりは許して欲しい。私にだって女の子らしい部分が、ほんの少し、とはいえあるのだから。

「はぁ……」

授業中なのも気にせず、今日で何度目かすらわからないため息をついた。
縁下に告白しようと決めたとき、フラれることは怖くなかった。それよりも、自分の想いを告げられない方が、きっと後悔するだろうと、そう思っていた。
その考えは、今でも変わっていない。でも、でもだ。好きな人に好きな人がいるかもしれない……なんて、付き合おうだなんて言うつもりも、そんな気もなかったけれど、やっぱり悲しいとは思ってしまう。
ぼーっとしていれば、先生が黒板消しを手に取った。そろそろノートをとらないと……。手にシャーペンを握り、黒板の文字を書き写していけば、ある言葉が目に飛び込む。

“当たって砕けろ。と叫んだ敏夫の気持ちについて”

当たって……砕けろ……。そうだ! そうだよ! 私は元々当たって砕けろの精神だったはずだ。少し弱気になってしまったりしたけれど、伝えればそれで心の底から満足なんだ。それは今も変わっていない。て言うか、付き合うとか考えられない。なら、当たりに行けばいいんだ! そうすれば、後は自然と砕けることもできる。
今の縁下との関係は、確かに居心地がいいし、壊したくない。でも、縁下は私を異性として見てないのに、私だけ縁下を異性として見てるなんて、フェアじゃない。告白を決めた一因には、こんなものもあった。

(私は、このままじゃいけないんだ!!)

教科書の挿絵にいる味のあるヒゲをつけた敏夫の横に“ありがとう。ヒゲ、落書きしてごめん”と書き込み、板書を完成させる。
その時ちょうど、チャイムが授業の終わりを告げた。日直の号令を済まし、隣の縁下の方を向く。

「和泉?」
「縁下! 話があるんだけど!」
「え!? えーと、ごめん。部活あるから……」
「だめ! 私の都合で悪いけど、今日の今じゃないとダメなの!! 10分……いや5分で終わらせるから!!」

私の気迫におされ、戸惑いつつもコクンと頷く縁下に満足し。

(縁下のことを考えると、バレー部部室近くがいいかな……)

しかし、あまりにもバレー部部室や第二体育館が近いと、またバカ二人が来てしまう可能性がある。なので、程よい距離感の中庭へ向かう。ここからなら、走れば5分以内に部室か体育館に行けるだろう。
さあ、今日こそ伝えてやる!! 意気込みを十分に縁下と対峙した。

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