一万打記念リクエスト | ナノ


▼必殺技タックルを繰り出した [ 4/4 ]


「こんばんはー……」

そろりとドアを開けながら、中の様子を窺う。キョロキョロと見渡してみても、部屋の主の気配は感じられない。そもそも、部屋に電気がついていない時点でいないのだろうが。

「よしっ、驚かす大チャンス!」

私は、週に一度、必ず菅原家にお邪魔している。単純に昔からの週間で、その時に孝支を驚かそうとすることも、毎回恒例だ。
最近は部活動が忙しいようで、帰ってくるのが遅くなっている。少し寂しいが仕方がない。孝支は、全国へ行くために頑張っているのだ。

「名前ちゃーん、そろそろご飯の準備手伝ってー」
「はぁーい!」

まだまだ孝支は帰ってこないだろう。先に部屋の下見をしたかったのだが、おばさまの頼みとあっては仕方ない。
週に一度、不定期に遊びに来る私にご飯を用意してくれる心優しい、料理上手なおばさま。そんな彼女のお手伝いをやらないわけには行かないだろう。
机にお箸を並べ、コップやお茶を準備していく。

「そろそろ孝支が帰ってくるんじゃない?」
「え、あっ! もうそんな時間か!」
「お手伝いはいいから、隠れてきたら?」

ニコニコと孝支そっくりの顔で笑うおばさま。いや、この場合似たのは孝支なんだけど。

「じゃあ、ちょっと隠れてくる! ありがとう、おばさま」

どうしよう、どこに隠れたらより驚かせるだろう……。うぅーむ……と考えながらぐるぐる回っていると、名案が降りてきた。
玄関前に待機して、軽く屈伸運動。あとはいつでも行けるように踏切準備。

「よぉーしっ! 準備万端! ばっちこい!」

パァンッと頬を叩き、気合を入れる。すると、トントンと玄関の向こうから足音が。おじさまは遅いらしいし、これは確実に孝支だ。
扉の方を睨みつけ、前傾姿勢で待ち構える。
ガチャ、とドアの取っ手が引かれた。これが雷管ピストルの合図の変わり。
「ただいまー」声がして、孝支が入ってきた瞬間、足に力をこめタックルをかます!

「だりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「うぉぉぉ! 名前!?」

ドーン! と盛大な音を出しながら、玄関先に転げる私達。私が孝支を押し倒してるようになったけれども、気にしない。

「どうだ! 参ったか! 驚いたか!」
「いてて……危ないだろぉ……」
「ごめんごめん、怪我しないようには気をつけたんだけど……」

孝支の上からどいて、手を差し出す。

「あー……びっくりした……」

私の手を借りながら立つ孝支が零した言葉を、私は聞き逃したりしない。

「びっくりした!? よし! 私の勝ちぃ!」
「あれは反則だろ!」
「そんなルールありませぇーん」
「卑怯者め……!」

舌をだして「あっかんべー」と言うと、ジト目で睨んでくる孝支。
二人でやいやい言い合っていると、おばさまがやってきて「いい加減にしなさい!」と軽く叱られる。いつまでたっても子供な私たち。二人で顔を見合わせて、どちらともなく笑いあってから美味しいご飯を食べるため、食卓へ向かうのだった。

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