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勉強1:息抜き9 [ 2/4 ]

「ねえ、志摩くん」
「どしたん? 名前ちゃん」

私と志摩くんは、所謂、志を共にする同士、と言う奴で。

「このプリントの山はさ、いつになったら減ってくれるのかな?」
「さぁ〜? いつやろなぁ……」
「正直、私は今すぐにでもやめてしまいたいんだけど」
「いや、やめたらアカンやろ。若先生の課題やで」

そう言いながら、手元の問題とにらめっこする志摩くん。ちなみに、補習常連の奥村くんは、奥村先生のところで特別補習である。志摩くんも連れて行かれそうだったのだが、奥村先生が面倒見きれないので、置いていかれてしまった。志摩くん本人は、すごく喜んでいたけれども。 

「でも、珍しなぁ。名前ちゃんが、課題忘れてきた上に居眠りて」
「普段は上手に手を抜くし、見つからないようにしてたんだけどね。実は気づかれてたみたい」

「流石奥村先生だよ。わたし達より、ずっと上手だよねー」と言うと、「ほんまにその通りやわ」と返す志摩くん。
いつの間にか、志摩くんは視線をあげており、問題のことなんか、もう微塵も見ていなかった。もちろん、私もである。

「そう言えばさ……って何やってるの?」

なんとなく雑談を開始しようとした時、志摩くんが、右手で器用にシャーペンを操っていた。くるくるりと、踊るように回るシャーペンに、目を奪われる。

「ペン回しやん。知らん?」
「知ってるけど、私の知ってるペン回しはそんなんじゃない。こんなん」

くるり、とペンを回そうとしたものの、落としてしまう。カタンッという音が響き、なんだか無性に悔しくなる。

「……私だって、ペン回し出来てたから。昔は、志摩くん程じゃないにしても、普通に回せてたし。今のは、たまたまミスっただけだから」
「……名前ちゃんの意外な一面やね」
「何が? ペン回しできないからって、馬鹿にしてるの」

むすっと膨れてみると、「ごめんごめん。そないな風に、むくれてんの珍しくて」と言いながら、真向かいに座っていた志摩くんが、隣に移動してくる。

「どうしたの?」
「ペン回し、したいんやろ? 教えたるわ」
「え、ちょ」

ニコニコ笑いながら、近くでゆっくりとお手本を見せてくれる。「ここで、中指使って……」など、細かい解説つきだ。

「へぇー、そんな風になってたんだ。志摩くん、ペン回しだけはすごいね。だけは」
「うわ、ひどっ! 名前ちゃんも、すぐできるようなると思うで」
「え、ほんと? ちょっと頑張ろうかなー」
「いけるいける! 名前ちゃん、筋ええし」
「ペン回しの筋ってなによ」

二人でキャッキャとはしゃぎだしたのだが、この五分後、念のためにと見回りに来た奥村先生に見つかってしまい、怒られたのは言うまでもない。

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