大切なのは温度



朝晩が少し肌寒くなってきた10月。寒くなったとはいえ、昼間はまだまだ暖かい。というか、登校時間の気温に合わせた格好をしていると、うっすらと汗ばむこともある。

「この時期は着るものに困るんだよね〜」
「わかるわぁ。今日もセーター邪魔やし」
「今セーターあっついけど、朝と帰りは寒いもんね」

ぐだぐだと話しながら、ゴミ袋を持って中庭を歩く。今は掃除の時間だ。そして、私たちはごみ捨てという名のサボり真っ最中である。

「そういえば」
「どしたん?」
「いやさ、セーターで思い出したんだけど。この前読んだ少女漫画でさ、彼シャツ? ジャージ? カーデ? まあ何かしら、彼氏の衣服を着るみたいなのが女の子の憧れ! って書いててさぁ」
「少女漫画なんか読むんや。意外やな」
「暇だったんだもん。でね、私その彼シャツ? っていうのがさ、男の子だけの憧れ的なヤツだと思ってたのね。エロ本とかでありそうじゃん」
「あー。確かにそうかもなぁ」
「だからびっくりしてさぁ。で、どんな感じなのかなって」

そこまで話したところで、ちょうどごみ捨て場に到着する。少し勢いをつけてゴミ袋を押し込み、塵がついていたというわけでもないのだが、なんとなく手を叩く。

「ほな、彼セーターやってみる?」

同じくゴミ袋を押し込み終わった志摩が、そんなことを言い出した。志摩、私の彼氏じゃなくね? なんて野暮なことは置いといて。断る理由もないし、少しは興味があったし、私は快くその案を受け入れる。

「あ、でも私今セーター着てる」
「ほな、名前ちゃんの俺が持っとくわ。で、こっち着たらええねん」

セーター二重なんてダサいどころの話ではないし、彼セーター云々以前の問題である。志摩が脱いだセーターと、今まで着ていた私のセーターを交換し、受け取ったそれをもぞもぞと着て準備は万端!

「これが……彼セーター……」
「おお、ええやん! 似合ってるで〜」
「ほんと? 志摩のセーターと私のセーター同じ色だから、あんまり代わり映えしないね」
「サイズだけやな。で、彼セーターのご感想は?」

テレビのインタビュアーの真似をして聞いてくる志摩はほんとにノリがいいなぁ、なんて思いつつ。

「あっつい以外に言葉が見つかんない」

そんな見当違いの感想を呟いた。

[ 3/3 ]


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -