砂糖に勝る甘さはない



「ねえ、志摩くん。チョコより甘いもの……ってなんだと思う?」

誰もいない祓魔塾に、彼女である名前ちゃんに呼び出されたのが数分前。
バレンタインやし、チョコでもくれるんかなー、なんて淡い期待を抱いて行ってみれば、それ以上のご褒美が用意されていた。
するり、と俺の首に腕を回し、妙に色っぽく聞かれ、鼓動が普段の二倍速で動いているように感じられる。

「え……?」
「チョコより甘いものだよ……。あげるって言ってるの」

普段は俺が触ろうとすれば軽く拒否し、甘えてくることもなければ、甘えさせてもくれないことに定評のある名前ちゃんである。そんな名前ちゃんが、今は俺の体に寄りかかり、首に腕を回し、ほぼほぼ抱きついているような体勢でいる。

(これは、もしかしなくてもバレンタインサービス……!? 普段は全然サービスなんてしてくれへんのに……!)

軽く感動を覚えつつ、このチャンスを逃してはならないと決め顔を作る。そして、精一杯の格好をつけて「名前ちゃんのキス……ちゃう?」と言ってみた。
すると名前ちゃんは。

「はっ、そんな訳ないじゃん」

あろうことか、彼氏を鼻で笑い。そして「ほら、これ」と袋詰めされた砂糖の塊を寄こすのだった。

「あの、名前ちゃん……?」
「何?」
「これは……」
「砂糖の塊だけど?」
「デスヨネ……」
「ハッピーバレンタイ〜ン」

パチパチとやる気のない拍手と言葉を頂き、俺の甘いバレンタインは、終わったのだった。
翌日、名前ちゃんから既製品ではあるものの、チョコレートをもらい歓喜するのだが、そんな未来を今の俺が知るよしもない。

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