かごめかごめ | ナノ

いち とある冬の日

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最上義明殿、お元気ですか。
こちら大和でも、先日大雪が降り、すっかり冬景色になった。
知っての通り、私はあまり体が丈夫でないので、春になるまで旅行は久秀や三好君たちが許してくれそうもない。
冬の羽州にも行ってみたいと思っているのだけど。
ところで、近
――――
『久秀』
「何だね?」
『今、手紙書いてるんだけど』
私の同い年(前世も入れれば私のほうが18歳年上)の旦那様が後ろから抱きついてきた。
その上、肩に顎を置いている。
呼吸の振動が手に伝わるので、このままだとかなり酷い字になるだろう。
「ああ、そうだね」
がくがくと私の手が揺れる。
紙に黒いしみができた。
あー、初めからやり直しじゃないか!
書く気がすっかり失せてしまって、仕方なく筆を硯に置く。
「手紙はもういいのかね」
『君のせいでやる気が霧散した』
分かっていて聞いているんだから、たちが悪い。
そんなんだから乱世の梟雄とか言われるんだ。
『で、何の用?』
後ろ――正確には斜め横だけど――を見ようと首を動かすと、唇に柔らかい感触。
『な、な、な』
「落ち着きたまえ、幻。言葉になっていないよ」
いきなり何を、というか、君は落ち着きすぎだろう。
言いたいことは色々あるけど、ちゃんと発音できない。
「全く、少しは慣れたらどうだね? 私と卿は、夫婦なのだから」
そう、私たちはかれこれ20年以上も夫婦をやっている。
でも、私がこの手の(彼曰く)ふれあいに慣れる事はないと思う。っていうか、絶対無理だ。
「ああ、それで特に用はないのだが、寒くてね」
しばらくこうさせてもらうよ。
久秀の腕にこもる力が、一層強くなった。

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