「ふぬぁあぁああ…!」
とても女の子とは思えない声をあげ、もう一度挑戦
私は取る!あの本を!!
『本屋物語』
「はッ…この本を読むには低身長じゃだめなんですか?身長の高い人専用ですか?」
つい口からぼやき声が出た。
何度か挑戦してみたが、まったくとどかない。かすりもしない
周りより小さい自分の身長が憎い
「だいたい何で脚立とかないのよ、何で店員さんはレジに忙しそうなのよぉお…」
しくしくと心の中で泣いてみたが、この状況が変わるわけではないので止めた
もう一回くらい試したら、哀れなチビを思って誰か手を差し伸べてくれるかもしれない
「よし…ふぬぉおぉおお!」
うぅ…最近の日本は冷たい人ばかりなのですか?
「この本が欲しいの?」
はっ!これは私が待ち望んでいた天の声
「あ、そうで…すぅああ!土門くん!?」
クスクス笑いながら土門君は、私が欲しかった本をあっさり取って、これか?と渡してくれた
「いやー、奥から妙な声がすると思ったら田中さんだったんだな」
恥ずかしい。なんでもっと可愛い声を出さなかったんだ、と自分を責めていると
「田中さんってサッカー好きなの?」
「えっ!」
そう、私がとろうとしていた本はサッカーのルールブック
「あのッこ、これは…」
「サッカー好きならさ、いつもグラウンドでサッカー部が練習してるから見に来てよ」
ね?と、いつ見ても素敵な笑顔で誘われた
……………
ときどき放課後の教室から見るグラウンド
その中にいた1人の男の子
少しでも近づきたくて買ったこの本で
もっとあなたの近くまで行けますか?
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