チョキチョキチョキ
(よし!いいぞいいぞこの調子で…)
前髪を洗面所で切って整えていると、切り落ちた私の元前髪達が鼻にくっついた
「ふっ…ふぇ…ぶぇっくし!」
ヂャキン!!!
「あ、」
『まえがみ』
おはよー。
おはよう!
おはようございます
朝の通学路では色々な朝の挨拶が交わされていた
いつもの通学路を通っていた花子だが、帽子を深々と被り、コソコソと登校している。普段の花子を知っているものならあまりにいつもと違う態度に、どうしたの?と声をかけてしまうだろう
「…あれ?おーい花子」
びくりと花子は体を震わせ声をかけてきた主の方を見ると
「チッ…やっぱり綱海か…」
「うわぁ朝から機嫌悪いな。珍しく帽子被ってるし…なんかあったのか?」
うぐっと小さく花子は呟いた
「なな何もないよ!帽子だってほらたまにはイイかなーって思っただけだし」
「嘘だな」
「え!?」
「花子は嘘をつくと目が泳ぐからな俺の目はごまかせないぜ!…なぁ。なにかあったんだったら誰かに言ったほうがスッキリするぞ?」
スッキリ…ね
一番見られたくない人に何を言う?
もしこの前髪を見られたら…
(ぷぷっ花子何だよその前髪!そんなダセェ髪型してる奴の隣なんか歩けないぜ、じゃあな花子)
じゃあな花子の所が頭の中で何度もリピートする、あああ好きな人に変な髪型になった自分を見てもらいたがる人なんて居るのだろうか!
うーんうーんと悩む花子を見て綱海は原因っぽい帽子を隙を見てとった
「「あ」」
2人同時に出た間抜けな声
片方はこの前髪が原因かと納得し、片方は見られた恥ずかしさで顔が茹で蛸のように真っ赤になった
「あ、あう…綱海のバカァアア!!」
「あ!待て花子!!」
私なりの全速力で前髪を隠す事も忘れ走って走って…。ふと後ろを見ると綱海が追いかけてきていた
「こっちにくるなー!」
「うるせぇ!あと勝手に帽子取って悪かった!!」
「許さなーい!!」
2人共ぜぇはぁ息切れをしながら道をひたすら走ったが、スポーツをやっている者の体力は凄まじく途中からバテていた花子はあっさり捕まった
「「はぁ…ッ…はっ」」
お互いに息切れをしていたので少し落ち着くのを待ち。やはり最初に息が整うのも綱海だった
「はぁッ…別に逃げなくてもいいだろ!」
「はっ…はぁ…だってぇ……」
この時、私の中の何かが逆ギレしだしていた
(誰のせいで逃げたのよ!あんたにこの変な前髪を見られたくないからよ!ああ馬鹿馬鹿しい!なんで私はこんなに綱海が好きなのよ!もう知らない!!)
「……だから…」
「?今なんて…」
「綱海が好きだから!変な髪型になった私を見られたくなかったの!!」
…ああ終わった私の青春
この馬鹿みたいに短くなった前髪も失恋記念としてはぴったりかもしれない
「ぶふっ…なんだそんなこと気にしてたのかよ。あははははっ!」
「なッ!そんなことって…私はっ…」
「俺は惚れた女の前髪が短くなったくらいで嫌いになるような小さい男じゃないぜ?」
「………は?」
「だから俺は惚れた女の前髪が短くなったくらいじゃ」
「いやいやいや誰が誰に惚れてらっしゃると?」
「俺が花子に」
綱海が自分を指差した後に私を指差した
えーっと。あ、これは夢かな?よくあるよね夢落ちって、はははーまさかこんな体験を私がするとはね☆ああでも良い夢だったな夢じゃなきゃいいのに
「いっとくけど夢じゃないぞ?」
綱海は私の心が読めるの?とツッコミを入れようとした私の口は綱海によって塞がれた
「な?夢じゃないだろ?」
「あ…あああ…い、今の何が起きたのでしょうか?」
パニックで全く回らない頭を何とか回転させて、今起こったことを整理しようとしていると、とても楽しそうに綱海が笑い
「お?じゃあもう一回してやるよ」
「えええぇぇえ!?」
「相思相愛だったんだからいいじゃねえか」
「あの!でも!そんな!」
体中の熱が顔に集まってくるのを感じ慌てて私は顔を両手で隠した
「ふふっしょーがねぇな…」
顔は見えないが綱海のとても楽しそうな声の後、私の額に柔らかいモノが当たった
……………
(今日はデコにキスで勘弁してやる)
(いやいや、口にもしたじゃん)
(しかしそのデコ…なんというかキスがしやすいというか)
(うっさい!)
(こんな可愛い花子をみんなに見せられないなー)
(なに言って…)
((あ、学校!!))
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