6.
………婚約?
……………私が?
…………………誰と、?
「だからぁ、***とイルミちゃんの婚約よ〜」
困惑する私とは裏腹に、にこにこと至極嬉しそうな笑みを浮かべるママ。
あぁ、ママがそんなに嬉しいなら婚約しても……………ってちがう、それはちょっとちがう。
落ち着け私、落ち着いてよく考えてみよう。
確かにイルミちゃんはボーイッシュだけど、イルミちゃんも私も立派な女なんだから、婚約なんてできるはずがない。
まぁ国籍でも変えればできるのかもしれないけど…現状でいえば不可だ。
ましてや名家ゾルディックの長女が同性婚だなんて、世間体的にもあってはいけない。
うん、そう。
だからこれはきっとなにかの冗談で…
「イルミちゃん、***のことよろしくね?」
「君になら安心して娘を任せられる。頼んだよ」
「…できる限り努力します」
……冗談の、はずなんだけど…
「ほんっとうに嬉しいわぁ!***ちゃんが私の義娘になるなんて!!」
「うちはなかなか特殊だからな。時間はかかるだろうが、少しずつ慣れていけばいい」
「は、はぁ……」
「私、嫁入りする側の不安はよぉく分かるわ。だからなんっでも相談してちょうだいね?」
「あ、ありがとうございます……?」
………なんだろう、
なんでこんなに違和感なくまとまろうとしてるんだろう。
シルバさんもキキョウさんもパパもママも、イルミちゃんまでなんの反論もせずに婚約を受け入れようとしてる。
…おかしい、絶対に何かがおかしい。
「それじゃあイルミ、私達はまだ大事なお話があるから、部屋で待っててちょうだい」
「うん」
「***ちゃんもイルミの部屋で待っててちょうだいね。お話が終わり次第、また呼ぶわ」
「え、」
「分かった。***、行くよ」
「え、あの、い、イルミちゃんちょっ……っ!」
ちょっと待ってと言い切る前に、力強く腕を掴まれた。
そりゃあもう骨が軋むくらい強く。
イルミちゃんったら相変わらずなんて怪力だろうか……
…なんて悠長なこと考えていれば、私の腕を掴んだままイルミちゃんは歩き出して。
「わ、っと…!ち、ちょっ待って…!」
思考もまとまらないままイルミちゃんにずるずると引きずられながら、私は両親達のいる和室を後にした。
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