4.




ゾルディック家の執事さんの運転するリムジンに乗り込んで数十分。


ようやくゾルディック本邸に辿り着く。


車から降りるとき、ドアを開けてくれた執事さんにお礼を言えば、なぜかひどく驚いたような顔をされて。


執事さんのそんな反応が少し気になったけれど、今はあまり考えていられない。


既にキキョウさん自ら、門の前まで出迎えに来てくれているのだから。



「久しぶりねぇ〜キキョウ。産後はどう?体調も悪くない?」


「えぇ、見ての通り元気よ!貴女も変わりないみたいでなによりだわぁ」


「ふふっでもキキョウ、また痩せたんじゃない?着物なのにその細さ…この3年で3人も産んだなんて信じられないわぁ」


「まぁやだ、相変わらず口がうまいんだからっ!」



なんて、子どもと旦那そっちのけできゃいきゃいと若者よろしく女子トークを始めるキキョウさんとママ。


…キキョウさんの方がママより多少叫んでる感はあるけれど、このふたりの口調はどこか似ている気がしてならない。


昔、なんとなく気になって聞いたときは、出身が同じだから、なんてふたりは言っていた気がするけれど。


そんなどうでもいいようなことを考えている間にも、キキョウとママの会話はどんどん盛り上がっていって。


今までの経験から、これは長引くだろうなぁとなんとなく悟った私は、このまま1時間近く放置される覚悟を決めた。


…の、だけど、



「…まったく、中にも入らず何やってるんだ」


「あらアナタ」


「あらじゃない。お前達だけで盛り上がってどうする」


「まぁまぁシルバ。久しぶりの再会なんだし、少しくらいなら」


「お前は相変わらず嫁に弱いな」


「そうかい?そんなことないと思うけど…」


「…まぁいい、とりあえず全員中に入れ。話はそれからだ」



ゾルディック家当主のシルバさんの登場で、長引くかと思われた会話は上手い具合に収束して。


私達は全員客間に向かうことになった。



客間に向かう途中シルバさんに、しばらく見ないうちに大きくなったな、なんて言って頭を撫でられて。


私の頭なんてすっぽりと包んでしまうほど大きな手と、見慣れない和服姿に、ちょっときゅんとしてしまった…ことは秘密にしておこう。



「さぁさぁ、どうぞ座って!あ、***ちゃんは…そう!真ん中に座ってちょうだい!」


「は、はい」



通されたのは純和風の畳の部屋。


広い部屋の中心には、これまた純和風な座卓がひとつ。


異国の文化にはそれほど詳しくはないけれど、キキョウさんとママの影響でジャポンの知識だけはそれなりにあるつもりだ。


パパとママはそれぞれシルバさんとキキョウさんと向かい合って座ったけれど、私の向かいだけは空席で。



「もうっイルったら何してるのかしら!!仕事からはとっくに帰って来てるっていうのに…!!


「あら、イルミちゃん今日もお仕事だったの?」


「えぇ…今日は大事な日だから仕事はとらないように言っておいたのだけど…っもう!反抗期かしら…!!」


「ふふっ、いいじゃない働き者で。若いのに偉いわぁ」


「弟達の教育にも熱心だと聞いてるよ」


「あぁ、あいつは家の為によく働く。…いい長子に恵まれた」



両親達がわいわいと談笑する中、私は全神経を襖の方に集中させていた。



だって、微かに感じるこの気配は、確かにイルミちゃんのものだ。



ほんとうに、もうすぐそこまで迫って来ている。



…あと少し、あと少し、



どこからともなくやってきた緊張をほぐすべく小さく深呼吸をした、その時、



「イルミ様、ご到着です」



言い終わるのと同時に、廊下で控えていた執事さんが、ゆっくりと襖を開けていく。



徐々に開く襖が、妙にじれったい



「、あ……」



襖が開ききると同時に、待ち焦がれていた真っ黒な瞳と、視線が交わる。




あぁ、うん、…夢じゃない



ほんとに、本物のイルミちゃんが、すぐそこにいるんだ




そう実感した瞬間、私は弾かれたように立ち上がり、イルミちゃんに駆け寄った。



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