2.
フリルやリボンがこれでもかというくらいあしらわれた、ピンクのかわいいワンピース。
正直、こんな乙女趣味全開のかわいい服が自分に似合うとは到底思えないのだけど、ママが私のために買ってきてくれたというのだから無碍にはできない。
「あらあらまぁ、思ってた以上に素敵だわぁ〜!よく似合ってるわよ***」
「え、へへ…そうかなぁ」
「ねぇ、これも付けてみない?あなたにすごく似合うと思って買ってみたのよ」
「う、うん」
そう返事を返せば、ママは嬉しそうに笑って私の髪に触れる。
キラキラと輝くスワロフスキーが散りばめられたカチューシャは、このワンピースととてもよく合って。
「かわいいわぁ〜 流石わたしの娘ねぇ」
カチューシャを付けた私を見て、ママはまた頬を緩ませる。
大好きなママのこんな笑顔が見られるのなら、たまにはこんな服を着てみるのもやぶさかじゃあないかもしれないなぁ、なんて。
人形さながらの着せ替えを終えると、すぐ自家用の飛行船に押し込まれて。
行き先も教えてもらえないまま、早数十分。
…さすがにもう我慢できない。
「ねぇパパ、ママ、今日はどこに行くの?」
純粋に疑問をぶつければ、パパは少し驚いたような顔をして。
「なんだママ、まだ言ってなかったのかい?」
「あらやだ…すっかり忘れてたわぁ」
ごめんなさいねぇ、なんてそんなにはにかみながら言われてもちょっと困る。
私は早く質問の答えが欲しいのだ。
「外出の予定なんて、しばらくなかったはずなのに」
着飾った私と同じく、パパもママも普段よりきっちりとした服装だけれど、パーティーに行くにしては些か軽装すぎる。
旅行の予定もなかったと思うのだけど。
「それがねぇ、急に決まったのよ。一昨日だったかしら?」
「あぁ、まぁ仕方がないよ。向こうもうちも何かと忙しいからなぁ」
「そうよねぇ。キキョウも最近すごく忙しそうだもの」
「キキョウさん?」
「そうそう、今向かってるのはククルーマウンテンって言う所なの。キキョウがねぇそこに住んでるのよ」
「キキョウさんのお家…」
ということは、つまり…
「っねぇママ!イルミちゃんには?会えるの!?」
興奮して、つい大きな声になってしまう。
はしたないとは分かっているけど、でも仕方がないと思うの。
だってあのイルミちゃんに、たったひとりの友達に会えるかもしれないんだから。
「ふふっ、***ったら。イルミちゃんのことが好きなのは分かるけど、あんまりはしゃいじゃだめよ」
「もうすぐ会えるさ。それまで大人しく待っていられるね?」
「っうん…!」
なんて、勢いよく返事したはいいけれど、あと少しでイルミちゃんに会える、
そう思うだけでドキドキして、どうしても落ち着かなかった。
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