11.




「ふつつか者だけど、よろしくお願いします」



なんて言って、はにかみながら笑ってみせる***に目眩がした。


知ってるんだ。


***がオレに抱いてるのはただの友愛だって。


今の今までオレのことを女だと思ってたくらいだから、まぁそれは至極真っ当というか、当然と言えば当然の感情なんだろうけど。



「………まぁ、まだそれでもいいか」



婚約が決まった以上、時間はたっぷりあるし。



「イルミちゃん…?今なにか言った?」


「別になんでもない……ことはないか。…***」


「な、なに?」



握手を求めるように無言で手を差し出せば、***は呆けたように何秒か固まって。


その様子を黙って見ていれば、今度は緊張したような面持ちで差し出した手をぎこちなく握ってきた。



「…なんでそんなに緊張してるの」


「だ、だっていきなり握手なんて…」


「散々抱き付いたり体触ったりしたのに、今更握手で照れるって……っふ、」


「っか、からかわないでよイルミちゃん…」


「ごめんごめん。久しぶりだからさ、つい」


「もう……」



***は少し怒ったような表情をしてみせるけど、頬が赤いせいか全く恐くない。


照れ隠しなのが見え見えで、かえって可愛らしく見えるくらいだ。


なんて、そんなこと言ったら今度こそ本当に怒りそう…というかいじけそうだから言わないけど。


***がこれ以上いじけてしまわないように、そろそろ本題に入ろう。



「…***」


「!っ、は、はい…」



さっきより距離を詰めて顔を近付け、視線を合わせる。


自分のより小さくて柔らかい***の手を、力を込めすぎないよう優しく握り返せば、***の顔は更に赤くなった。


男慣れしてないような初々しい反応に、なんだかひどく安心する。



「……オレにとって何より大切なのはゾルディックだから、どんな時も***を優先してやれるわけじゃない。………でも、できるだけ***のこと、幸せにしたいと思ってる」


「っ……」


「…おじさんとおばさんにはさっき言ったけど、***にはまだ言ってなかったから」



指輪もないし、プロポーズなんて大層なものじゃない。


自己満足の一方的な決意表明なんて、***を困らせるだけかも知れない。


でも、どうしても気持ちを伝えておきたかった。



「それと改めて、…これからもよろしく」



言葉と共に手を握る力を少し強めれば、***も、ぎゅっと握り返してきて。




ありがとう、嬉しい




なんて、目尻に涙を浮かべながら笑う***を見たら、



あぁやっぱり、オレは彼女が好きなんだと、


実感せざるを得なかった。



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