ヒソカが帰ってきてから3日目の朝。


部屋を覗いてみると、もうそこにヒソカの姿はなかった。



「………いな、い…」



今回はやけに甘えてきたから、滞在期間は短いのだろうとなんとなく感じ取ってはいたけど、まさか黙って出てくなんて…。


ナイショとかヒミツとか、そんな言葉で行き先を誤魔化すことはあっても、なにも言わずにどこかへ行ってしまうなんてことは、今まで一度もなかった。


こんなこと初めてで、どうしていいか分からなくなる。



「………」



嫌な想像が頭をよぎるけど、頭を思い切り横に振って打ち消そうとする。


…振りすぎて少しえづきそうになったけど、変な想像は消えた。よし、結果オーライ。


ふむ、どうしよう…一応連絡だけしてみようかな…。


まだ少し動揺しながらそんなことを考えていると、ふと、枕元の白い紙の存在に気付く。



「?…なにこれ」



手にとり裏返してみると、そこにはよく見慣れたヒソカの筆跡。



『イルミから急な依頼が入った。
もう夜中だし寝てるキミを起こすのもなんだから、名残惜しいけどこのまま行くよ。
またしばらく、イイ子で待ってて◆』



……………。



「…な…なん、だぁ…」



その書き置きを読んだ途端、ひどく安心した。


どうやら心配は取り越し苦労だったらしい。


…しかしあれだ、またこの名前。



「イルミ…確か前にもイルミからの依頼がどうって……」



数ヶ月前の記憶を必死にたどってみる。


イルミ…イルミさん…


確かヒソカがとても気に入っている、凄腕の……なんだっけ…



「…でも、きっとそのイルミさんよね、……たぶん」



綺麗な名前だし、女の人かなぁ。


きっと名前に違わず綺麗なんだろうなぁ…。


あの飽きっぽいヒソカがそこまで気に入っている人って、一体どんな人なんだろう。



「…ちょっと気になる…!」



あれこれ勝手に想像した結果、イルミさんはきっとものすごい美女だと決め付る。


だって、あながち間違っていないような気がするから。


まぁ全部勘なんだけど…。


…うん、きっと美女!



「はぁ〜…会ってみたいなぁ、イルミさん」



ヒソカのことをすっかり忘れてしまったわたしは、まだ見ぬイルミさんを勝手な想像で構築していくのだった。




近いうち、イルミさん本人と出会うことになるなんて、露知らずに…





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