2人で囲むには少し大きめのテーブルに、これまた2人で食べるには少し多いくらいの料理を並べていく。


次々とテーブルを彩るいくつもの料理を見て、少し作りすぎたかも…なんて今更思ったりもしたけれど、ヒソカがたくさん食べてくれるから大丈夫 な気がする。


うん、きっとなんとかしてくれる。


…………………多分。



必要な食器と飲み物を用意すれば、準備は完了。


あとはヒソカを呼ぶだけだ。



「ヒソカーご飯よー」



家全体に聞こえるくらいの声を出すと、「今行く」とヒソカの部屋から短い返事が聞こえた。


そして呼び掛けから一分も経たないうちに部屋のドアが開いて、ヒソカがリビングへとやってくる。


テーブルに所狭しと置かれた料理が視界に入ると、ヒソカの顔が一瞬だけ引きつった。



「……これはまた、随分と張り切ったねぇ」


「き…気のせいじゃない?いつもと同じくらいよ?」


「うん、目泳ぎすぎ」



精一杯平然を装ったつもりだったけれど、どうやらバレバレらしい。まぁ、それもそのはず。


今までにわたしの嘘がヒソカに通用したことなんて、一度もないのだから。



「…さ、冷めないうちに食べよう?」


「誤魔化すのも下手だねぇ。…まぁいいや、食べようか」



そんなひと悶着を経て、ようやく食事が始まった。



「そう言えば」


「ん?なぁに?」


「昨日ちょっと外に出たら向かいの夫婦に捕まってさ。式はいつ頃、なんて聞かれちゃって」


「……ちゃんと否定した?」


「さぁ?」


「…じゃあなんて答えたの?」


「来年か再来年に挙げたいと思ってる、とだけ言っておいたよ」


「はぁ…またそんな誤解されるようなこと言って……」


「いいだろ別に。どうせ男もいないんだからさ」


「っよ、余計なお世話…!」



なんて、いつも通りの他愛ない会話をしながら食事をしていると、ふとヒソカの手が止まる。



「…?どうかした?」


「どうもこうも、なんだいコレ」


「あ、」



ヒソカが指差しているのは、レタスの下に隠すように置かれたプチトマト。


しまった、気付かれた。



「こうしておけば知らず知らず食べるとでも思った?」


「思ったからやってみたんだけど…さすがに気付いちゃったかぁ…」


「ボクを騙そうなんて100年早い」



偉そうに言ってはいるけど、いい年してトマトも食べられないようじゃどんな台詞を吐いても格好が付かない。


いい加減、好き嫌いを減らしてほしいものだ。



「…って、ちょっとヒソカ!人のお皿に移さないの!」



隙ありと言わんばかりに、プチトマトをフォークで刺して人のお皿に移そうとするヒソカの手を掴んで、全力で阻止しにかかる。



「自分で食べなさい…!」


「◆」


「っこら、誤魔化さない!」



子どもみたいな行動をとるヒソカを前にすると、つい母親じみて…というか、言葉が説教くさくなってしまう。


もしわたしが早く老けたら、それは絶対にヒソカのせいだ。


なんて余計なことを考えていると、ヒソカの腕の力がふっと弱まる。


それに安心して、浅くため息をつきながらヒソカな行動を阻止していた手を離した、


瞬間、



「っむぐ…!?」



引くかと思ったヒソカの腕は、わたしが拘束を緩めた途端伸びてきて。


フォークの先端に刺さったプチトマトは、わたしの口に勢いよく突っ込まれた。


ヒソカの思い通りになるのも癪なので、吐き出してやろうかなんて一瞬思ったりもしたけれど。


食べ物を粗末にするわけにもいかないので、とりあえずヒソカを睨み付けながら、口の中に飛び込んできたプチトマトをそのまま咀嚼する。



「そんなに睨むなよ。興奮しちゃうじゃないか」


「………」



光悦の表情を浮かべるヒソカにどう反応したものか。


この幼なじみの常識破りな感性には、時たま反応に困ることがある。


言いたいことは山ほどあるけれど、とりあえず、この口の中にあるプチトマトを飲み込んだら、まずはお説教から始めよう。


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