***をひとしきりからかった後、部屋に戻って夕飯が出来るのを待つ。


***は、過剰なスキンシップに顔を赤らめ動揺しつつも、嫌がる素振りは見せたことはない。


ついさっきも、動きづらいと迷惑そうな口調で言いつつ、覗き込んで見えた頬は緩んでいた。



「ホント、可愛いなぁ…」



***そんな表情を思い出すと、自分の頬まで緩んでくるのだから、もうどうしようもない。


どれだけ溺れているんだか。


自分でも呆れるくらいだ。



「……ん?」



そんなぬるい幸せに浸かっていると、ふいにケータイが鳴る。


ディスプレイには " イルミ " の文字。



「…もしもし」


『ヒソカ、今ちょっといい?』


「イイけど、出来るだけ手短に頼むよ」



もうすぐ夕飯だから、と言う言葉は飲み込んでおく。


イルミは一応、***とこの家の存在を知ってはいるけど、あまり踏み込んだことを話すつもりはない。



『分かった。でさ、この前ハンター試験の話しただろ?』


「あぁ、キミとボクが組むってヤツかい?」


『そうそれ。実はその試験、オレの弟も受けるらしくて』


「弟?…あぁ、確か……キルア、だっけ?」


『あれ?よく知ってたね』


「…キミの口から何回も聞いてるからね」


『そうだっけ?まぁいいや。それでさ、そのキルなんだけど』


「強いのかい?」


『んーまだ弱いけど、素質は十分だからこれから伸びるよ。ヒソカ好みなんじゃない?』


「へぇ…まぁ、実際に会ってみないと評価の仕様がないけど、キミがそこまで言うなら楽しみにしてるよ」


『うん、多分気に入ると思う。だからさ、』


「ん?」


『***だっけ?会わせてくんない?』


「……は?」



…いきなり何を言い出すんだ。


何故自分の弟の話から、***の話に変わる?


しかもいきなり会わせろだって?


意味が分からない。


色々とかみ合ってないだろ。


イルミの言動は理解し難いことが多いが、流石にこれは、今までの中で一番意味が分からない。



「……一応聞くけど、理由は?」


『え、今の流れで分かんない?』



分かるわけないだろう。



「…分からないから聞いてる」


『そう、じゃあ説明するけど』


『キルってさ、オレの弱点みたいなモノなんだよね。大事な弟だし。その自分の命より大事な弟が、ヒソカみたいな快楽殺人趣味のヤツと知り合う、なんて兄としては心配で心配でしょうがないわけ』


「…だから?」


『だからさ、オレが弱点晒すんだから、ヒソカも晒せって言ってるんだけど』



…なるほど、そういうことか。



「ボクが素直に従わなかったら、どうするつもりだい?」


『まさか、どうもしないって。ハンター試験では一応組むことになってるし、パートナーの関係は対等な方がいいと思っただけ』



イルミは淡々とそう告げるが、それは真意ではないだろう。



「…本音は?」


『ヒソカの家の大まかな場所は分かったけど、住所までは特定出来てないから、そこら一帯の女を手当たり次第殺そうかと思ってる』


「………」


『もちろん、ヒソカがいない時に』



なんて、さっきと変わらず淡々と言ってのける。



『明日最寄りの空港まで行くからさ、迎えに来てよ。あ、時間は21時で。じゃあよろしく』



返事をする間もなく通話が切らる。


幸せが一転、なんだかとてつもなく厄介な事になってしまった気がする。


…………さて、どうしたものか…


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