「ヒソカーごはんよー」 食器を並べながら呼び掛ける。 が、一向に返事がない。 きっと食卓の準備が整う頃には部屋から出てくるだろう。 そう思い支度を続ける。 「……まだ出てこないし…」 準備が整っても、ヒソカが部屋から出てくる気配はない。 寝ているのかとも思ったけど、心配なので一応部屋を覗いてみる。 「ヒソカ、入るよ?」 いつものように返事を待たず部屋に入る。 ヒソカは起きているけど、ケータイを片手になにやら険しい表情をしていた。 わたしが部屋に入ったことにも気付いていないようで。 「……ヒソカ?」 「っ…***」 「…どうしたの?なにかあった?」 ヒソカが珍しく切羽詰まったような声を出すものだから、こっちまで焦ってしまう。 「………」 「…わたしには話せないこと?」 仕事のことなら無理には聞けない。 ヒソカは、わたしが仕事のことに干渉するのを嫌がるのだ。 彼の仕事は大方、人の命に関わるものだから、わたしにはなるべく聞かせたくないらしい。 「……あの…ごはん、ラップかけておくから…食べられるときに食べてね?」 「………」 ヒソカからの返事はない。 深刻なことかも知れないから、そっとしておこう。 そう思って部屋から出ようとすると、ふいに腕を掴まれる。 「***」 「な、なぁに…?」 困ったような顔をして、わたしを見つめてくるヒソカ。 一体何があったんだろう。 また黙り込んでしまったヒソカの次の言葉をじっと待つ。 「……明日、」 「うん、」 「…ウチに、人を連れて来たいんだ」 「うん、……………うん…?」 ……え?…それだけ? あんなに困った顔をしておいて、まさかそれだけなんてこと……。 「え、えっと…その人のこと苦手とか?だから悩んでるの?」 「いや、苦手じゃあない」 「ならその人はヒソカのお友達、ってことでいいの?」 「んー友達というか……仕事仲間?」 「そ、そう……あ、わたしはいない方がいい?それなら明日は出掛けるけど…」 「いや、***には居て貰わないと困るんだ。彼はキミに会いたいらしい」 「え…?」 ヒソカが知り合いを連れてくること自体初めてなのに、しかもその人が面識のないはずのわたしに会いたがってる…? 「…ちょっと待って、その人とわたしって会ったことある?」 「ないよ。ボクの知る限りではね」 「そ、そう……」 なら、なんでわたしに会いたがっているんだろう……。 彼とは一体どんな人なんだろうか。 イルミさんみたいな美人(予想)だといいなぁ、なんて、初めて会うヒソカの仕事仲間さんを想像して浮かれてみる。 そんな浮かれるわたしを見て、ヒソカは晴れない表情を更に険しくした。 そんなに仕事仲間さんと会うのが嫌なんだろうか。 なんて思って、特には気にしていなかったけど、 後から思えば、この時、ヒソカは既に気付いていたのかも知れない。 ミリーの時より、更に大きな嵐が目前に迫っていることを…。 ←/→ |