油断していた。


あの女が***に友情以上の感情を抱いていることは知っていたが、***にそっちの気はないからと、安心してしまっていた。



(まさかキスまでしてるなんてね…)



しかも***の比較的冷静な反応を見る限り、あの女とのキスは初めてというわけじゃなさそうで。


自分で推理しておいて余計に腹立たしくなった。




だってこれじゃあ、***をここに住まわせた意味がない。





数年前、好き勝手に様々な場所を転々とするボクに付いて回るのが難しくなった***は、田舎に家を買ってひとりで暮らすと言い出した。


確かにボクも、***を連れていることで行動範囲が限られることを面倒に思うことはあったけど。


それでも、***を手放すなんて考えたことは一度だってなかった。




そこでボクは珍しく真剣に思案した。


どうすれば***を手放すことなく、自分の行動範囲を広げることができるのか。


暫く、と言っても2,3分悩んだ結果、ひとつの考えに辿り着く。




【ボクが田舎に家を買って、***をそこに縛り付ければいい】




そうすれば***を一生、自分の目の届く範囲に置いておくことができるし、何より田舎なら人が少ない。


年の近い男共への牽制も簡単だろう。


これで***に、ボク以上に親しい存在ができる心配もない。


ボクとしては万々歳だ。





…そう考えて、***をここに住まわせた筈だったのに。


あの女のせいで、ボクの計画は丸つぶれだ。


あぁ、本当に目障りでしょうがない。





あの女に汚された***の唇を感情のまま塞げば、途端に、心のわだかまりは消え去った。


それと同時に、あの女から***を奪い返したという支配感と、得難い充足感が湧いてくる。


***に対する独占欲は、止まることを知らない。




だからこそボクは、彼女と親しいヤツが心の底から嫌いでたまらないんだ。


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