ヒソカとミリーの立ったままの睨み合い、もとい膠着状態が続くこと早い数分。


いつもより数段禍々しい空気を背負ったヒソカ。


定番のにやけ顔にも不機嫌さが滲み出ている。


対するミリーも表情や態度の全てからヒソカに対する嫌悪感がだだ漏れだ。



…どうしよう、空気が重い。



「…え、えっとー…お、お帰りなさい、ヒソカ?」



空気を打破するべく、とりあえず、帰宅したヒソカにおかえりを言う。


それも、彼の機嫌が少しでもよくなるようにいつもより笑顔を3割増で。


すると、ヒソカの周りの空気が少し和らぐ。


よかった…作戦は成功のようだ。


…そう思い安心したのもつかの間、



「…ただいま、***」



ヒソカの唇がにやりと弧を描いた次の瞬間、頬に温かい感触。



「っ……!」



ちゅっ、なんてかわいらしい音をたてて離れたのは、紛れもなくヒソカの唇で。


頬へのキス自体に抵抗はないけど、人前でされるなんてことは今までほとんどなかったから、さすがに驚いてしまう。


呆気にとられていると、おまけとばかりにまぶたと額にもキス。


しかもばっちりミリーに見えやすい角度。


どうやら、彼女に見せ付けるのが狙いらしい。



「っ〜〜〜!!!」



そのミリーはヒソカの作戦通り、逆上したようなもの凄い形相でヒソカを睨み付けている。


今にも飛びかかって行きそうだ。



「み、ミリー…落ち着いて…」


「そんな顔するなよ、酷い顔だ……あ、元からか◆」


「ちょっと、ヒソカ…!?」



人が宥めようとしてる傍からこいつは……


お願いだからこれ以上刺激しないで欲しい。


このままからかい続けて、ミリーが泣き出してしまったらどうしてくれるのか。



なんて心配をしていると、





「っ***…!!」


「な、なにミリー…っんぅ!」





ミリーが飛ぶような勢いでわたしに突進してきたかと思うと、その勢いにまかせて唇を塞がれる。




もちろん、ミリーの唇で。


そりゃもう、むちゅうぅぅっと。





「は、………」



さすがにこれにはヒソカも驚いたようで、動きが止まっている。


かく言うわたしは少し驚きはしたものの、普段からスキンシップ旺盛なミリーとのキスはこれが初めてというわけではないので、そこまでの動揺はない。


とは言っても、やっぱり少し気恥ずかしいけれど。



「…ははんっ、どうよヒソカァ!!ほっぺにちゅーくらいで調子に乗らないことね!!とゆうか、あたしと***の仲がそんなことで裂けると思うのが大きな間違いだってのよバーカバーカバーカこの腐れ外道のエセピエロ!!!」



かなりの早口でヒソカを罵倒すると、そのまま目にもとまらぬ速さで自分のバックを掴み、颯爽と去って行くミリー。


玄関からちゃんと、お邪魔しました、なんて声が聞こえてきたあたり、彼女はほんとに律儀な子だと思う。





……さて、問題はここからだ。



「…あのー…ヒソカ?」


「………」



呼びかけには応答なし。



「ねぇヒソカ、ねぇってば」


「………」



肩を揺すっても反応なし。



「ヒソカってばー…」


「………」



頬をつねってみても抵抗する気配もない。



「はぁ…どうしよう…」



何をしても、ぴくりとも反応しなくなってしまったヒソカをどう対処したものか……。


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