私の心の姿です | ナノ

ヒロイン視点


昼休みに屋上庭園で花の写真を撮って教室に戻る途中、廊下の少し前を柳先輩が歩いているのが見えた。

速足で近づいた私が声をかけるよりも先に、柳先輩は立ち止まって振り向いた。

「こんにちはっ」

偶然でも会えたことが嬉しくて、私の声ははずんでいた。

「ああ、こんにちは。……みょうじ。」

「はい? どうかされましたか?」

あいさつを交わした後、なぜか柳先輩は私の頭に視線を注いでいて、私は少し首を傾げた。

「珍しく髪を結んでいるが、それはお前の趣味なのか?」

「いえ、髪は結んでいませんよ? ……あれ?」

不思議に思いながら自分の頭に手をやると、髪が一部分だけ結ばれていた。

髪を結んでいる“なにか”を外してみると、それはピンク色のうさぎの顔がついた髪ゴムだった。

「どうして、これが……いつの間に…?」

「誰かの悪戯、か。」

「そうかもしれませんね。」

ついさっき屋上で写真を撮っていた時だろうか。

私はカメラのファインダーを覗いていると、周りへの注意がおろそかになってしまうから。

「それにしても、違和感は無かったのか?」

「う……はい、あまり気にならなかったです。」

少しあきれたように言われてしまい、自分の鈍さに恥ずかしくなる。

「大方、写真を撮る事に夢中で気付かなかったのだろう。…全く、しょうがないな。」

わずかに苦笑しながら、柳先輩は私の髪を指で梳いて整えてくれる。

(なんだか落ち着かない…)

優しい手付きに内心そわそわしていると、柳先輩の手は離れていった。

「あ、ありがとうございます。」

なんとなく照れてしまい、頬に熱が集まる。

「…いや。」

「あの、……週末なのですが、蓮の花を撮りに行こうと思っているんです。」

すぐに別れてしまうのはもったいない気がして、他愛もない話を持ち出す。

「一昨日の新聞に記事が載っていた公園か?」

「はい、種類がけっこうあると書かれていたので楽しみで……ちなみに、一番の目当ては白蓮です。」

私の言葉に、柳先輩は顎に指を当てて少し考えるような仕草をした。

「うちの紫陽花といい、白い花が好きなのか?」

「はい。もちろん他の色の花も好きですが、白が一番好きです。」

「そうか。俺も白い花は好きだな。」

柳先輩が落とすように静かに微笑むのを見て、男の人なのに綺麗だなと思う。

「よろしければ、撮った写真をお見せしましょうか? その……良いものが撮れれば、ですけれど。」

なんだかドキドキしてしまって、私は手に持っているカメラを無意味にいじった。

「それは楽しみだな。」

「現像したら一番に見せに行きますねっ」

「ああ、待っている。」



素敵な予感

あなたに会えると嬉しいと思う理由は…


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