私の心の姿です | ナノ

ヒロイン視点


頭上には快晴の青空が広がっている。

「うーん……やっぱり、こうかな?」

ぐるりと中庭の芝生の上を転がって、うつぶせだった状態からあおむけになる。

覗いているファインダー越しに逆さまに映るのは、青空に向かって咲く色とりどりの花壇の花たち。

シャッターを切る音が耳に響いた。

芝生に寝転んだまま、ゆっくりと流れる雲を眺める。

「みょうじっ」

声がしたのとほぼ同時に、バサッと脚になにかがかけられた。

「えっ?」

不思議に思って身体を起こすと、自分にかけられたのは学校指定のジャージの上着だった。

そして、すぐそばには少し息を切らせた柳先輩が立っていた。

「柳、先輩…?」

よくわからなくて首を傾げたら、柳先輩は小さくため息をついた。

「スカートで膝を立てるのは問題があり過ぎる。」

「それなら大丈夫ですよ。下にショートパンツを履いていますから。」

問題ないと笑って答えたら、柳先輩は眉をしかめてしまった。

「そういう事ではない。」

「すみません、今後は気をつけます。」

「そうしてくれ。…しかし、お前は何処でも写真を撮るのだな。」

「はい。撮りたいと思った時に撮らないと、二度と同じ瞬間には出会えませんから。」

「そうだな。全ては時と共に移ろってゆく。」

「同じ一瞬には二度と出会えないですからね。なので、だいたいいつもカメラを持ち歩いています。」

ジャージを持って立ち上がり、片手で制服を軽くはらう。

「楽しそうだな。」

「はいっ、とても楽しいです。」

「それはいいが、色々と気を付けた方がいい。」

スッと柳先輩の手が私の髪に伸びてきた。

「草が付いていた。」

すぐに私の髪から離れた柳先輩の手には芝生の草が1本ある。

「あ…ありがとうございます。(ちょっと恥ずかしい…)」

「いや。お前は一つの事に集中すると他にはあまり注意がいかないようだな。」

柳先輩が指を離すと、草はひらひらと芝生の上に落ちていく。

「それは……よく言われます。友達にはあきれられてしまっていて…」

柳先輩に指摘されたのは本当のことで、私は苦笑いをするしかなかった。

「そうだろうな。」

フッと息だけで柳先輩はかすかに笑った。

「う…(笑われてしまった。)」

「さて、俺はそろそろ戻るが、お前も授業に遅れないようにな。」

「はい。柳先輩、また今度。」

「ああ、また。」



校舎に戻る柳先輩の背中を見送っていると、どこからか草を踏みしめる音がした。

周りを見回すと、少し離れた場所にある木の陰から知らない人が姿を現わした。

「やっぱり油断し過ぎじゃ。」

「え?」

「お前さんは気にしなさんな。」

「は、はい…?」

その銀髪の人は私に軽く笑いかけると、すぐにいなくなってしまった。

「…………この間、柳先輩と話してた人…だよね?」

顔はハッキリと見ていなかったけれど、銀色の髪なんてめずらしいから覚えている。

「予鈴だ。私も戻らなきゃ。……あ、これ。」

校舎に向かって歩き出そうとして、私は手に柳先輩のジャージを持ったままだったことに気づいた。



心地好い余韻

あなたと話した後は、なぜか温かい気持ちになる。


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