私の心の姿です | ナノ

ヒロイン視点


「また会ったな。」

静かな落ち着いた声に、立ち止まって振り返る。

「こんにちは、柳先輩。先日はありがとうございました。それと、直接伺えなくて失礼しました。」

感謝と謝罪の気持ちから、丁寧に頭を下げる。

「いや、それは構わない。気にするな。…それと、写真は見せてもらった。」

「そ、そうですか。……ええと…」

せっかく見てもらったのだから感想が気になるけれど、自分から聞いても良いものなのか少し考える。

「はっきりと言えば、それなりには良く撮れていると思うが、技術はまだまだといった所だな。」

「う……はい、まったくもってその通りです…。」

私は今年の春に中学校に上がると同時に写真部に入部し、まだカメラを手にしたばかりの初心者だ。

だから柳先輩の指摘は正しいのだけれど、はっきりと言われて少し落ち込んでしまう。

「だが…」

言葉を切った柳先輩を不思議に思って見上げると、柔らかな表情をしていた。

「俺は好きだと思った。」

「っ…!」

どうしよう、すごく嬉しい。

嬉しくて胸がいっぱいになる。

「あっ、ありがとうございます!」

自然と顔がゆるんでしまうのが抑えられない。

「いや、俺は思ったことを言ったまでだ。ところで、今日はどこに行くんだ? 帰り道ではないのだろう?」

「はい、少し遠回りして、この先の公園に行くところです。友達に花壇が綺麗だと聞きまして。」

「そうか。なら、途中まで同じ道だな。」



夕焼けの空の下、柳先輩の隣を歩きながら、なにかお礼ができないかと考える。

(なにかないかな? あんまり大げさじゃないもので……あ!)

思い出して、学生鞄の中を探す。

(あった、これだ。)

私はすぐに見つかったそれを鞄から取り出した。

「柳先輩っ」

「どうした?」

「あのですね…よろしかったら、これをもらっていただけませんか?」

私が柳先輩に差し出したのは、押し花にした四つ葉のクローバーで作ったしおりだ。

「これは?」

「春に写真を撮っている時に見つけて作ったんです。……あ、でも…要らない、ですよね。」

話しながら、すぐに後悔した。

どうにも私は考えが足りない。

急にこんなものをもらっても困るだろう。

「すみません。私の写真を好きだと言っていただいて、本当に嬉しかったんです。それで、なにかお礼がしたかったのですが……ごめんなさい。」

だんだんと声が小さくなっていってしまう。

「いや、有り難く貰っておこう。…有難う。」

しょげる私の手からしおりをそっと取り上げると、柳先輩は柔らかく微笑んだ。

それを見て、私はまた嬉しい気持ちになった。



あなたは私を喜ばせる

そんな言葉をもらえるなんて思っていなかった。


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