私の心の姿です | ナノ

柳視点


暑い陽射しを木陰のベンチでやり過ごしながら、自然と考えが及ぶのは待ち人の事だ。

ここ最近はみょうじの事を考える割合が多くなっている。

どこか甘美な毒の様でもある。

じわじわと、侵食されていく様な感覚だ。

「後少し、か。」

腕時計で時間を確認し、俺は校舎の角に視線を向けた。

そろそろだろう。

息を切らしたみょうじが駆けて来るのは。

そして、きっと――

「柳先輩、お待たせしました!」

案の定、駆け寄ってきたみょうじは少し息を乱していた。

「大丈夫だ、殆ど待っていない。態々すまなったな。」

「いいえ、そんなことありません。」

みょうじは俺の隣に腰を降ろし、手に持っていたフォトブックを差し出した。

「どうぞ、約束していた写真です。」

「有難う。今、見ても構わないか?」

「はい、もちろんです。」

受け取ったフォトブックの淡いグリーンの表紙を開く。

最初は…おそらく春に撮ったのだろう、咲き誇る桜の花が柔らかな色彩で写っている。

それから、蒲公英や白詰草などの生命力に満ちた野の花たち。

他には、うちの庭で撮った写真に、少し前に見せてもらった蓮の写真もあった。

一枚一枚じっくりと見ている俺の隣で、みょうじは落ち着かない様子で視線を彷徨わせていた。

「これは…」

最後の一枚は水平線に沈む赤々とした夕陽の写真だった。

「少し前に海岸で柳先輩とお会いした時に撮ったものです。」

横から俺の手元を覗き込んだみょうじが答えた。

「やはりあの時の写真か。これも綺麗だな。」

「…ありがとうございます。それで、よろしければなのですが…これはもらっていただけませんか?」

「いいのか?」

「はい。もらっていただけると私も嬉しいです。」

少し照れたような顔で俺を見上げて、みょうじは微笑む。

「本当に可愛いな、お前は。」

俺の言葉を聞いた途端に、みょうじの頬が朱に染まる。

「ど、どうしてそうなるのですか!?」

「フッ…」

その反応が可愛らしくて、俺が小さく笑いを零すと、

「う……からかいましたね?」

みょうじは少し膨れてしまった。

「いや、思ったことを言ったまでだが。…嫌か?」

「い、いえっ その……う、嬉しい…です。でも、恥ずかしいです。」

小さく言って俯いたみょうじだが、染まった耳までは隠せていなくて、俺は声を出さずに笑った。



君のことばかり想う

そして、緩やかに溺れてゆく。


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